粉博士のやさしい粉講座:実践コース

 

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実践コース:測り方疑問解決編
比表面積/細孔分布測定装置
16 マイクロポア(micropore)を持つ物質のBET比表面積
マイクロポアを有する物質の場合、BET法による比表面積は真値を示していないということ、それでもBET法による比表面積が使用されているということを前項(比表面積/細孔分布測定装置 実践コース(15))で触れました。この点についてもう少し詳しく説明します。
 
BET法は、以下の場合の比表面積測定に適用可能と考えられています。
→無孔性物質またはマクロポア(50nm以上の細孔)を持つ物質…等温線はII型
→メソポア(2~50nmの細孔)を持つ物質…等温線はIV型
事実、これらの場合は相対圧0.05~0.35の間でBETプロットの直線性も良好であることが普通です。

 
しかし、マイクロポアを持つ物質の場合、BET法による比表面積の適用性については疑問が持たれています。
理由として考えられる点を以下に示します。
→マイクロポアを持つ物質の場合、I型等温線を示し、低圧領域でマイクロポアフィリングという充填プロセスが進行する。このマイクロポアフィリングは単分子層吸着と区別することができない。
→マイクロポアフィリングが多くの場合相対圧0.1以下で完了してしまう。
→BETプロットが、相対圧0.05~0.35では直線範囲が得られない。C値がマイナスになる。
→細孔サイズと吸着ガスのサイズが近いために、単分子層吸着がうまく形成されない。

 
また、2~4nmの細孔を有するメソ多孔性物質についてもBET法の適用性が疑問視されています。こちらは単分子層吸着から多層吸着への移行と毛管凝縮が非常に近い相対圧領域で起こるからです。
 
以上の点で、マイクロポアを有する物質のBET比表面積は真値を与えないと考えられています。これに代わる比表面積測定法もいくつか提案されているものの、それぞれの手法の解釈や条件は簡単ではありません。このため、最も普及している比表面積測定法であるBET法で、マイクロポアを有する物質の比表面積(ある種の等価比表面積)を求めるための指針が提案1)されており、ISO規格2)、JIS規格3)でも紹介されています。以下にその内容を説明します。
 
マイクロポアを持つ物質のBET比表面積計算法
BET法をマイクロポアを持つ物質に適用するための条件としては以下の2つがあります。
(1)BET解析結果のC値は正の値となるはずである。(BETプロットの縦軸の切片が正値)
(2)相対圧の適用範囲は、BET式におけるQ(P0-P)もしくはQ(1-P/P0)が、P/P0(相対圧)とともに単調増加する範囲に限る。(Q:吸着量、P:吸着平衡圧、P0:飽和蒸気圧)

 
実際の測定データとして、活性炭に対する窒素の吸着等温線を例として解説します。(図1)
図1 活性炭への窒素吸着等温線(液体窒素温度)

図1 活性炭への窒素吸着等温線(液体窒素温度)

図1の吸着等温線データでは、低相対圧領域の急激な吸着量の増加からマイクロポアの存在が推定できます。この活性炭のBET比表面積を計算するために、先ほどの条件(2)を検討しなければなりません。図1では、横軸が相対圧(P/P0)、縦軸が吸着量(Q)となっていますが、縦軸を Q(1-P/P0)に変換して吸着等温線データを書き直します(図2)
図2 Q(1-P/P0) vs P/P0プロット

図2 Q(1-P/P0) vs P/P0プロット

図2では横軸(相対圧、P/P0)を対数スケールで表示しています。縦軸の最大値はP/P0=0.11のところになります。
この点まではグラフは単調増加していますので、この点以下でBET解析を行えばよいことになります。今回は、例えばP/P0を0.01~0.1と解析範囲を定めます。(注:P/P0=0.11の点を含めても構いません。)
この範囲でBET解析を行った結果を図3に示します。
図3 BETプロットと解析結果(解析範囲P/P0:0.01 ~0.1)

図3 BETプロットと解析結果(解析範囲P/P0:0.01 ~0.1)

このように解析範囲を決めれば、C値がマイナスにならず、かつ直線性の良いBETプロットを得ることができます。
 
まとめ
マイクロポアを有する物質のBET解析について解説しました。
今回の測定では、3Flexを用いて相対圧で10-8までの極低相対圧領域まで測定を行っています。また3Flexでは、ここまでの手順を自動設定したり、画面を見ながら解析条件を容易に調整できるモード(図4)も搭載していますので、より正確なBET解析を簡単に行うことができます。
図4 3Flex BET解析画面(microactive使用)

図4 3Flex BET解析画面(microactive使用)

なおBET解析に限っては、必ずしも相対圧10-8までの極低相対圧領域まで測定を行う必要はありません。トライスターやGEMINIで相対圧10-3オーダまでの測定を行っても同じように考えることができます。
 
参考文献1)J.Rouquerol, P.Llewellyn and F.Rouquerol,“Is the BET equation applicable to microporous adsorbents?” In:P.Llewellyn, et al.,“Characterization of Porous Solids Ⅶ ”,49-56,Elsevier,2007.
2)ISO 9277:2010(E)  3)JIS Z8830:2013

 
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