吸着等温線が単調増加しない、吸着量の数値がマイナスになる場合の考え方

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実践コース:測り方疑問解決編
比表面積/細孔分布測定装置
10 吸着等温線が単調増加しない、吸着量の数値がマイナスになる場合の考え方

ガス吸着法を用いて色々な試料の吸着等温線、脱着等温線を測定する場合、特に液体窒素温度での窒素吸着の場合では、I型、II型、IV型(実践講座4参照してください)の何れかに近いタイプの等温線が得られることが普通です。
ところが、前処理条件、サンプルの状態、測定装置の状態によっては、吸着等温線が、圧力に対して単調増加しないとか、吸着量の絶対値がマイナスになる場合があります。
ここでは、その原因と留意点について解説します。

これらの現象(吸着等温線が単調増加しない、あるいは吸着量の数値がマイナス)は、理論的には考えにくいのですが、実際には起こりえます。考えられる原因として代表的なものを列挙します。
i) サンプルの吸着量が非常に少ない場合。
ii) サンプルの前処理が不十分で測定中に何らかのガスが発生する場合。
iii) 死容積測定で使用したヘリウムが細孔内に残留している場合で、これがゆっくり放出される場合。
iv) 試料セル周りを含む配管にリークがある場合、もしくは装置の異常。
v) 液体窒素の蒸発による温度上昇(デュワーの破損、等温ジャケット付け忘れ)など。
装置が異常か否かを確認するには、ブランク測定と、参照試料の測定が有効です。 ブランク測定は、試料を入れない空のセルでの測定です。

ブランク測定を行って、吸着量絶対値(= 吸着量表示cc/gx試料重量g)が0±0.1cc(目安です。装置により異なります)の範囲に入り、かつ参照試料の測定結果が所定の範囲に入っている場合には、上記iv)やv)ではなく、i)~iii)の問題が起こっている可能性が高くなります。

このような場合は
試料量を増やして測定してみる。
前処理条件を変えて測定してみる。
測定条件を吟味する。
などをおこなって、現象がどう変わるかをチェックしてみてください。それで上記何れかの原因を特定することができます。  
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