粉博士のやさしい粉講座:実践コース

 

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実践コース:測り方疑問解決編
比表面積/細孔分布測定装置
9 ガス吸着法による細孔分布の測定限界について

吸着等温線の解析には、多くの古典的手法や現象学的な手法が採用されてきました。これらと異なり、近年注目されているのがDFT法です。これは分子動力学シミュレーション法とも呼ばれる方法のひとつで、吸着現象を分子レベルの統計的・熱力学的理論から解析する方法だといえます。

単純な例を用いてご説明しましょう。
たとえば、液体アルゴン温度でのアルゴンガス吸着の場合で、固体の細孔が全て均一な幅を持っていると仮定します。アルゴンガス分子はランダムに細孔内に入り込むものの、表面付近では分散力もしくは分子間力が強く働きその影響を受けます。その結果、平均的には表面に一番近いところで長い時間存在することになります。逆に表面から離れればその影響が弱まります。このことから、表面からの距離に依存してアルゴンガス分子の存在している密度に分布が生じます。
アルゴン(液体アルゴン温度)の吸着する様子の図
幅4nmのスリット状細孔を持つカーボンへのアルゴン(液体アルゴン温度)の吸着する様子を図に示します。中央が吸着等温線であり、周囲のA~Dは、等温線上A~Dに相当するガス分子の密度分布(横軸は固体壁からの距離=分子直径きざみ、縦軸は分子密度)を示します。
図の位置
A: 殆ど全てのガス分子が固体壁から吸着ガス1分子直径分離れた所に集中しています。=単分子層形成過程
 
B: 多層吸着への移行
 
C: 細孔への充填
 
D: 毛管凝縮 がそれぞれ起こっていると考えることができます。

A~Cでは密度分布の減少時にベースラインに戻るのに対して、Dでは、アルゴンがバルクの液体状になって相変化しているためベースラインに戻りません。

吸着ガス、固体表面の物質、温度、細孔形状を決め、複数の細孔サイズに対してそれぞれ図のような密度関数から求まる等温線モデルが計算可能です。
実際測定される等温線は、この等温線モデルの重ね合わせであると考えられますので、deconvolutionの手法に基づいて実際の等温線を解析すれば細孔分布を求めることができます。

まとめ
DFT法は、マイクロポアやメソポア・マクロポアの区別無く適用できる唯一の方法といわれ、最近最も研究されている方法です。但し、基本の等温線モデルが確立していない未知なる固体材料についての適用には注意が必要であることは言うまでもありません。
 
参考文献 P.A.Webb , C.Orr : Analytical Methods in Fine Particle Technology , Micromeritics , USA(1997)
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