ペニシリン分解物の分析/LCMS

ペニシリンG標準品の分析を行なった後、同様にペニシリンG標準品(10mg/mL水溶液)を60 ℃,40時間で分解したものの分析を行ないました。クロマトグラムをFig.1に示します。
ペニシリンGのピークはほぼ消失しました。ここではピーク1,2に着目しますが,これらのマススペクトルのパターンは互いによく類似しました。得られたMSスペクトルより,分子量は308と考えられ,フラグメンテーションはペニシリンGと異なり,母核は一致しないと推定されました。

Fig.1 ペニシリンG分解物のクロマトグラム

 

さらにLCMS-IT-TOFを用いてMS/MS測定を行い,組成を推定しました。ポジティブ検出,ネガティブ検出ともC15H20N2O3Sが1位にランクされました。
ペニシリンG不純物としてBenzylpenilloic acids(Fig.2)が知られています。
組成推定結果,同じマススペクトルを示し隣接する2つのピークの存在などから,これらの化合物が生じたものと考えられます。

Fig.2 Benzylpenilloic Acidsの構造

LCMS-2020

液体クロマトグラフ質量分析計 LCMS-2020

  • 濃度レンジの広い不純物を検出するためには、高感度のみでなく幅広いダイナミックレンジが求められます。LCMS-2020は新たに開発したイオン光学系“新Qarray”により卓越した感度、再現性、直線性を実現しました。
  • 脂溶性、水溶性さまざまな不純物に対応できる守備範囲の広いイオン化法も必要です。LCMS-2020の多彩なイオン化法の一つである“DUIS-2020”は、ESIとAPCIのコンビネーションイオンソースです。これにより、極性の大きく異なる不純物も見逃しません。