UV照射によるアクリレート系紫外線硬化樹脂の反応分析 / FTIR

高分子材料は,混合,加熱,光照射などにより,時間の経過とともに,その分子構造が変化するものがあります。フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)はその測定動作の迅速さから,化学反応や変化の追跡手段としてたいへん有効です。今回は,紫外線照射によるラジカル重合により,比較的短時間で硬化するアクリレート系UV硬化樹脂の分析事例をご紹介します。
  
金属板をリファレンスとしてバックグラウンド測定を行った後,ピークが飽和しない程度に試料を薄く金属板に塗布しました。毎秒20スペクトルを取得するラピッドスキャン測定を開始し,約5秒経過後に紫外線照射を開始しました。測定結果のうち1秒毎の赤外スペクトルを抜粋して3D表示で示します。

紫外線硬化樹脂のタイムコーススペクトル3Dシフト表示

紫外線硬化樹脂のタイムコーススペクトル3Dシフト表示

1635cm-1付近のピーク(ビニル基のC=C伸縮振動)及び810cm-1付近のピーク(ビニル基のCH面外変角振動)は,紫外線照射により急速に減少します。

ピーク拡大図

1635 cm-1付近のピーク拡大図

ピーク拡大図

810 cm-1付近のピーク拡大図

紫外線の照射後(測定開始5秒後),1秒足らずで反応率は50%を超え,約5秒間で80%に達し,その後ゆっくりと反応が進行していくことがわかります。ラピッドスキャンデータから,反応率の時間変化も計算可能です。

ピーク面積値のタイムコースグラフ

反応率の時間変化グラフ

IRTracer-100
フーリエ変換赤外分光光度計

IRTracer-100は,干渉計や検出器の性能を向上させSN比 60,000:1というクラス最高の高感度を実現すると共に,高速な反応追跡を実現しました。操作性を向上させた LabSolutions IR 異物解析プログラムを組み合わせることで,微小・微量の試料でも,素早く,簡単に,美しいデータの測定と解析ができます。さらにネットワークに接続し,特に製薬業界などでニーズの高い,ラボ全体のデータやユーザーの一元管理が可能です。

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特長

  • 1秒間に20回の赤外スペクトルを測定できます。
  • 試料の反応過程を解析するためのラピッドスキャンプログラムにより,スムーズな測定が可能です。
  • ピーク高さや面積の他に,それらの値を用いた計算値からも変化を追跡することができます。