リチウムイオン電池は、セラミックス、高分子、電解液などの多様な材料が組み合わさっている点や、充放電による電気化学的な状態変化が伴う点などを考慮し、設計通りの電池を製造するために製造工程は管理され、電池容量や安全性といった仕様を満たすために多くの評価が行われます。試験機は治具との組み合わせにより、様々な評価ができます。

電極シートと集電体との密着力評価

  • バインダーにより電極シートは集電体に密着しており、Liイオンの移動により発生した電子は集電体を通って電池セルの外部に取り出されます。電池性能の向上や製造工程の管理のため電極シートと集電体との密着力を評価します。
    この治具は、試験機と連動しテーブルが移動するため90度のはく離角度を保ったままはく離試験を行うことができます。なお、180度はく離、T形はく離試験なども適切な治具を用いて測定できます。

集電体の引張強度評価

  • 集電体は、電極シートの目付量を増やすためにパンチング処理が施されたり、樹脂へ金属コーティングした材料の開発がされています。電極シートはRoll To Roll方式を用いて製造されており、製造時にテンションがかかります。そのため引張強度を評価します。
    この治具は、つかみ歯の首振りを低減し、つかみ歯を特殊形状とすることで箔を試験する際のチャック切れを低減する高性能なつかみ具です。集電体用の銅箔やアルミ箔の引張試験に最適です。なおセパレータ、電極シートなども適切な治具を用いて測定できます。

セパレータの突き刺し強度評価

  • 電池は充放電を繰り返すことにより、金属析出物が発生することがあります。この金属析出物がセパレータを貫通すると短絡し、発火事故の原因となります。そのためセパレータの突き刺し強度を評価します。
    この治具は、ナットを利用した簡便な固定方法を採用しているため、セパレータの取り付けや取り外しが簡単で、操作性に優れています。

活物質の密度評価

  • 電極材料の密度を上げるために製造工程でプレス処理を行いますが、プレス条件の強弱により電池性能にばらつきが生じることがあります。またプレス後の電極は何重にも巻回あるいは積層されるため、わずかな電極厚みの違いにより、巻回体や積層体などのサイズが設計寸法に収まらない可能性があります。そのため、粉末に対して圧力をかけた際の密度を評価します。
    この治具は、ケースとプランジャーのシンプルな構造のため測定後の試料の取り外しやケースの清掃が容易に行えます。

セルケースの強度評価

  • 電池セルケースは溶接などの接合技術を用いて製造されます。接合不良により電池セルにリークや電気的な接触不良などが発生します。そのため、セルケースの強度を評価します。
    この治具は前方開放式のため、試料の挿入やつかみ歯の交換が簡単にできます。くさびの作用によって、つかみ歯の間に試験片をしっかりと固定でき、試験中に試験片が滑ることを最小限に抑えることができます。

  • 手動式定位置くさび形つかみ具

電極シートの曲げ弾性評価

  • セルケースに合わせて加工される電極シートは、近年のリチウムイオン電池の高容量化に伴い電極の厚膜化が進められています。一般的に厚膜化すると硬くなり、曲げ加工時に外周部分の伸びが増加し、割れなどの問題が生じる可能性があります。そのため電極シートの弾性を評価します。
    曲げ治具は、試料の形状や大きさに応じたポンチや支点を数多く取り揃えています。さらに、支点間の距離を調整する場合も、簡単な操作で可能です。

  • 電極シートの曲げ弾性評価

電池セルの充放電時の状態評価

  • 電池は充放電に伴うLiイオンのインターカレーションにより膨張収縮が起こるため、一定の拘束圧がかかるように電池モジュールを設計します。そのため車載時にかかる荷重を与えた状態での評価が必要となります。電池セルを一定の圧力または一定の寸法で拘束した状態で電池性能を評価し、一定の圧力下では、寸法変動も測定します。
    この治具は、圧盤に設置された4つの変位センサーを用いて、圧盤間の距離を測定することにより、高精度な微小変位の測定が可能です。また、圧盤の表面は、ロックウェル硬さ(HRCスケール)60の高硬度のため、摩耗が極めて少なく表面の平滑性を維持できます。

  • 電池セルの充放電状態評価

電池セルの耐圧性評価

  • リチウムイオン電池は、高容量、高出力を得るため、内部の活性状態が高くなります。活性状態が高いため、内部短絡や外部からの衝撃等で異常が発生すると発火、火災が生じる可能性があります。そのため、電池セルの耐圧性の評価として圧壊試験を行います。
    このシステムの試験空間は防爆仕様を採用しているため、電池が発火した際の安全性が確保されており、防腐処理を施すことで電解液等による腐食も防ぎます。また、電池の釘差し試験にも対応しています。

  • 電池セルの耐久性評価

雰囲気制御による評価

  • 自動車に搭載する部品は、温度や湿度をコントロールした状態での評価が必要となります。リチウムイオン電池は、使用環境が性能や安全性に大きな影響を及ぼすため、環境管理を行った状態での評価が不可欠となります。そのため、各種試験機に雰囲気制御ユニットを取り付けて評価します。
    氷点下から高温までの実際の使用環境を想定し、引張、圧縮、はく離強度などのさまざまな強度試験を行うことができます。

  • 雰囲気制御による評価

電池材料の単粒子強度測定

  • 電池材料は製造工程や使用環境下で常に圧力を受けており、設計開発や品質管理において機械特性の評価は重要です。
    微小圧縮試験機MCTシリーズは、圧盤で粒子一粒に負荷を与え、試験力と圧縮変位の関係を、リアルタイムに測定する試験機です。粒径数 µmから測定ができ、リチウムイオン電池に使われる粉末材料の強度評価が可能です。適用事例として正極材、負極材、固体電解質などがあります。

  • MCTシリーズ