マグロの品種判定(マイクロチップ電気泳動装置)
漁獲量の減少や制限,一部の人気品種,産地の食材価格の高騰化,品種,産地の相違による価格差の大きさなどが,マグロの偽装表示の要因となっています。マグロ属魚類は生鮮・加工の状態では外観からの種の判別が困難です。それゆえ,流通の過程での取り違え,不正表示,偽装が社会的問題として取り上げられており,迅速簡便かつ正確な品種判別技術が求められています。
農林水産消費安全技術センターと水産総合研究センターはマグロの魚種判別方法をマニュアル化し公表しています。このマニュアルでは,PCR-RFLP(Polymerase Chain Reaction-Restriction Fragment Length Polymorphism)法が用いられています。マニュアルに従い,以下の手順でマグロ6種の品種判別を行いました。
- (1)マグロの魚肉検体からDNAを抽出。
- (2)抽出したDNAを鋳型とし,ミトコンドリアDNAに存在するマグロ特有の遺伝子配列を標的にしたPCR反応を実施

- (3)PCRによって増幅したDNAをAluI,MseⅠ,Tsp509Ⅰの3種の制限酵素で消化。
- (4)それぞれの酵素によって切断されたDNA断片は電気泳動で分離。
- (5)この切断パターン(Fig.1)を,判別用パターン(Table 1)と比較,解析してマグロの魚種を判別。

Fig.1 マイクロチップ電気泳動システムによるマグロのPCR-RFLPパターン
Table 1 マグロの判別パターン
大西洋産クロマグロ,メバチマグロβ,ビンナガマグロはAluI による制限酵素処理により判別できました。しかしながら,ミナミマグロ,メバチマグロα,キハダマグロは同一の切断パターンを示すので,MseI による制限酵素による切断パターンにて判別を行い,ミナミマグロは判別できました。残るメバチマグロα,キハダマグロについてはTsp509 Iによる制限酵素による切断パターンにて判別できました。