GC-MSによる水中の揮発性有機化合物(VOC)分析
水質基準に関する省令(平成15年5月30日厚生労働省令第101号)が定める水質基準項目の中には様々な物質が存在します。特に、揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds(VOC))は分析需要が高く、前処理が簡便で高感度なシステムが求められます。パージ・トラップ(PT)法や、ヘッドスペース(HS)法を用いることで、簡便かつ高感度に分析することが可能です。また、各種代替キャリアガスを用いて高感度に分析することができます。
VOC分析(PT法)
ヘリウム(He)キャリアガスを用いて、水中揮発性有機化合物をPT法で分析した時のトータルイオンカレント(TIC)クロマトグラムを図1に示します。また、各種キャリガスを用いて分析した1,4-ジオキサン及びブロモホルムのクロマトグラムを図2と図3に示します。Heキャリアガス、水素(H2)キャリアガス、窒素(N2)キャリアガス共に高感度に測定することが可能です。

図1 PT-GC-MSによる水中揮発性有機化合物(1 µg/L)のTICクロマトグラム(SIM測定、Heキャリアガス)
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- 1 1,1-ジクロロエチレン
2 ジクロロメタン
3 メチル-t-ブチルエーテル
4 トランス-1,2-ジクロロエチレン
5 シス-1,2-ジクロロエチレン
6 クロロホルム
7 1,1,1-トリクロロエタン - 8 四塩化炭素
9 1,2-ジクロロエタン
10 ベンゼン
11 フルオロベンゼン
12 トリクロロエチレン
13 1,2-ジクロロプロパン
14 ブロモジクロロメタン
- 1 1,1-ジクロロエチレン
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- 15 1,4-ジオキサン-d8
16 1,4-ジオキサン
17 シス-1,3-ジクロロ-1-プロペン
18 トルエン
19 トランスー1,3-ジクロロ-1-プロペン
20 1,1,2-トリクロロエタン
21 テトラクロロエチレン - 22 ジブロモクロロメタン
23 m,p-キシレン
24 o-キシレン
25 ブロモホルム
26 4-ブロモフルオロベンゼン
27 1,4-ジクロロベンゼン
- 15 1,4-ジオキサン-d8

図2 1,4-ジオキサンのクロマトグラム

図3 ブロモホルムのクロマトグラム
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サンプル水を専用の試料管に採り、試料管にパージガスを流すことで試料中の揮発性有機化合物を強制的に追い出します。追い出された成分は吸着剤に一旦保持され、その後加熱脱離させてGC-MSへ導きます。
VOC分析(HS法)
Heキャリアガスを用いて、ヘッドスペースのループモードで水中揮発性有機化合物を分析した時のTICクロマトグラムを図4に示します。また、各種キャリガスを用いて分析した1,4-ジオキサン及びブロモホルムのクロマトグラムを図5と図6に示します。Heキャリアガスは、ループモードでの測定が可能です。 H2キャリア、 N2キャリアではトラップモードを用いることで、1,4-ジオキサンを高感度に分析することが可能です。

図4 HS-GC-MSによる水中揮発性有機化合物(1 µg/L)のTICクロマトグラム(SIM測定、Heキャリアガス、ループモード)
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- 1 1,1-ジクロロエチレン
2 ジクロロメタン
3 メチル-t-ブチルエーテル
4 トランス-1,2-ジクロロエチレン
5 シス-1,2-ジクロロエチレン
6 クロロホルム
7 1,1,1-トリクロロエタン - 8 四塩化炭素
9 ベンゼン
10 1,2-ジクロロエタン
11 フルオロベンゼン
12 トリクロロエチレン
13 1,2-ジクロロプロパン
14 1,4-ジオキサン-d8
- 1 1,1-ジクロロエチレン
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- 15 1,4-ジオキサン
16 ブロモジクロロメタン
17 シス-1,3-ジクロロプロペン
18 トルエン
19 トランスー1,3-ジクロロプロペン
20 1,1,2-トリクロロエタン
21 テトラクロロエチレン - 22 ジブロモクロロメタン
23 m,p-キシレン
24 o-キシレン
25 ブロモホルム
26 4-ブロモフルオロベンゼン
27 1,4-ジクロロベンゼン
- 15 1,4-ジオキサン

図5 1,4-ジオキサンのクロマトグラム

図6 ブロモホルムのクロマトグラム
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バイアルを保温し、揮発したガスの一部を採取し、GC-MSへ導きます。ループモード、トラップモードを選択することができ、高感度に測定できます。また、サンプル保温のオーバーラップにより、生産性を向上させます。