マイクロプラスチックの解析に向けた熱分解GC/MSによる樹脂混合試料の分析

 

マイクロプラスチック(MPs)の定性分析には,フーリエ変換赤外分光光度計 (FT-IR) ,赤外顕微鏡を用いた顕微FT-IR,ラマン分光装置などが使用されますが,複数種類の微粒子が混在しそれらを分別することが困難であるような場合には,熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析 (Py-GC/MS) 法が有用な分析手法として報告されています。​

Py-GC/MS法は各樹脂に特有の熱分解生成物を高感度に検出することで,混在した微量の樹脂それぞれを個別に定性することが可能です。ここでは,MPsを模した混合樹脂材料を試料として,Py-GC/MS法で分析しその各樹脂の定性解析を行った事例を紹介します。

樹脂 熱分解生成物
PE C20, alkane
C20, α-alkene
C20, α, w-alkene
PP 2,4-dimethylhept-1-ene
2,4,6,8-tetramethyl-1-undecene
2,4,6,8-tetramethyl-1-undecene
2,4,6,8-tetramethyl-1-undecene
PS Styrene
3-butene-1,3-diyldibenzene
5-hexene-1,3,5-triyltribenzene
PVC Benzene
1-Chloroindan
Dihydronaphthalene Azulene
 
 

図 1   各樹脂の検出に用いた熱分解生成物

混合樹脂材料を分析して得られたトータルイオンクロマトグラム(TIC)は複雑なクロマトグラムになり,それだけでは含有樹脂の特定は困難でした。

そこで各樹脂の熱分解生成物のSIMクロマトグラムを用いて追跡することで,個々の樹脂の含有を特定することができました。一例として,PEの熱分解生成物のSIMクロマトグラムを下記に示します。

 
図2  PEの熱分解生成物のSIMクロマトグラム

図2  PEの熱分解生成物のSIMクロマトグラム

関連アプリケーション

 
赤外分光光度計(FTIR)

多機能熱分解システム

熱分解ガスクロマトグラフィー(Py-GC)は,ポリマー,プラスチック,ゴム,塗料,染料,樹脂,コーティング,セルロース,木材,繊維などあらゆる形態の不溶性材料や複合材料の微量な試料を通常の前処理を行うことなく分析することが可能です。

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