紙表面の分析/FTIR

紙の原料は木材から分離されたセルロースですが,これにバインダーを加えて圧着し,さらに強度保持,インキ止めのためのサイズ剤のほか顔料,クレーなどが塗布されています。 
また,特殊な用途に応じるために表面をさまざまな物質でコーティングした紙があります。食品用紙容器,粘着テープ,離型紙,コート紙などがその例です。これらの紙の表面を簡単に分析するには,赤外分光光度計(FTIR)によるATR法が最適です。

さまざまな表面処理が施された紙の表面を水平形ATR法で測定した結果を以下に示しました。
試料は厚紙,コート紙,牛乳パック,離型紙の4種類でそれぞれ裏側のスペクトルと重ねて表示しました。

厚紙のスペクトルには,1000,900cm-1付近にカオリンによく似た吸収が観察されます。
コート紙のスペクトルでは,1064,800cm-1付近にSiO2によると思われる吸収が見られます。
これに対し,牛乳パック,離型紙ではポリマーの吸収が確認できます。牛乳パックでは両面ともセルロースのピークは確認できず,代りにポリエチレンの吸収が見られます。また離型紙では,1260,1100-1000,800cm-1付近にシリコンポリマー特有のピークが確認できます。
 


 

赤外分光光度計

ATR法は,高屈折率材料でできた板状のプリズム表面に試料を密着させて測定する方法です。紙の種類によっては表面粗さが多少異なりますが,プリズムへ押さえつける力を強くして密着度を増すことにより,たいていの紙の表面スペクトルを測定することができます。