塗膜の表面観察と三次元表面性状パラメータ/OLS、SFT
塗膜(コーティング膜)は建材,輸送機,電子部品や電子機器,食品包装,印刷などのあらゆる分野で用いられています。人間の目は非常に高感度であるため,傷やうねりの有無や光沢の度合いなどの質感を敏感に捉えます。これらの質感は重要な性能であり,これらは塗膜の表面性状に大きく起因しています。品質検査における目視による検査は敏感である一方で数値化は困難です。
今回,二種類の明らかに見た目の質感が異なる半透明塗膜の表面形状の観察を3D測定レーザー顕微鏡OLS4100を用いておこない,さらに従来の二次元パラメータでは困難な塗膜肌の表面性状の数値化を三次元パラメータを用いておこなった事例を紹介します。
三次元表面性状パラメータ
国際規格(ISO25178)の三次元表面性状パラメータ(表面粗さパラメータ)をTable.1に示します。代表的なパラメータである算術平均粗さSaの算出式と概念図をFig.1に示します。接触式粗さ計における二次元の線粗さパラメータとは異なり,表面粗さパラメータは三次元で計算されます。これにより表面肌の異方性などの二次元的なパラメータではできない数値化が三次元での表面粗さパラメータにより評価できます。
Fig.1 算術平均粗さ Saの算出式と概念図
質感が異なる塗工紙の三次元形状と表面性状の数値化
Fig.2に2つの塗工紙の三次元形状(3D)像を示します。見た目の質感が異なる塗工紙表面の三次元形状の違いが得られています。この表面の性状をあらわす三次元パラメータ値をTable.2に示します。従来の二次元パラメータでもよく用いられる算術平均粗さSa,最大高さSzなどではわずかな違いしかありません。しかし高さ方向に関係するSskスキューネス(偏り度:平均面からの高さ分布の偏り)と横方向の構造に関係するSal(最短の自己相関長さ), およびStr(表面性状のアスペクト比:表面の肌の異方性)の三次元パラメータ値に違いがあることがわかります。
Fig.2 質感が異なる2つの塗工紙の2つの塗工紙の3D像
Table.2 塗工紙 #1と#2の三次元パラメータ値
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3D測定レーザー顕微鏡
3D測定レーザー顕微鏡OLS5000の外観を示します。この装置は波長405 nmのレーザー光と白色LED光を使用することにより高分解能なレーザー観察像とカラー像が得られます。さらに三次元形状(3D)計測や粗さ測定を非接触で行うことができます。
3D測定レーザー顕微鏡で得られる最新の国際規格, 三次元表面性状パラメータにより,表面の立体的な性状の数値評価を可能にします。