プラスチックの多角的評価による品質安定性向上
PLA樹脂におけるアニールによる機械特性への影響/変化とその原因検討
自動車や電気製品に良く使われるABS樹脂の代替材料である植物由来のPLA樹脂は環境負荷を低減する物質として期待されています。PLAはアニール処理により耐熱性などの材料特性が向上すると言われています。
今回は、アニール処理を施したサンプルAとアニール処理を施さなかったサンプルBの材料緒特性を比較することで、アニールによる機械特性への影響とその変化の原因究明を行いました。
アニールによる機械特性への影響評価
アニールにより弾性率、HITが増加し、破断伸びが低下することがわかりました。
■ 引張試験:AGX-V
アニールにより引張強さと弾性率は増加しましたが、破断伸びは低下しました。
表1 引張試験結果
アニール条件 | 引張強さ (MPa) | 弾性率 (MPa) | 破断伸び (%) | |
---|---|---|---|---|
サンプルA | なし | 58.7 | 3660.9 | 3.6 |
サンプルB | 100℃、30分 | 62.5 | 4020.8 | 1.9 |

■ 硬さ試験:DUH-210
アニールによりHITが増加しました。

図3 硬さ試験結果
表2 硬さ試験結果
HIT (MPa) | |
---|---|
サンプルA | 221.5 |
サンプルB | 277.6 |
アニールによる機械特性の変化の原因究明
アニールにより結晶化が進んだことで機械特性が変化していたことが分かりました。

■ 熱分析:DSC-60 plus
サンプルAの測定結果で見受けられる55.96℃のガラス転移点、114.08℃の結晶化のピークがサンプルBの測定結果では見受けられないことから、アニールにより結晶化が進んでいることが分かりました。

図4 熱分析結果
表3 熱分析結果
Tg (℃) | 結晶化 (℃) | 融解 (℃) | |
---|---|---|---|
サンプルA | 56.0 | 114.1 | 168.6 |
サンプルB | - | - | 169.1 |
ここがポイント!
- 多角的な評価は成形条件による機械特性への影響とその原因を評価する上で有効
- 硬さ試験は部分的に負荷を加えるだけで機械特性が評価可能
- 引張試験と硬さ試験を組み合わせて材料ベースデータを蓄積することで、品質管理効率の向上や、引張試験では品質管理が難しかった成形品の品質管理に有効