続・糖類の検出法

LCtalk51号INTRO


 49号では,糖類の「分離法」を,また50号では,「検出法」についてお話しましたが,この中でポスカラム蛍光検出法についてもう少し教えてほしい・・・とのお便りを頂戴しました。 そこで,今回は「検出法」の続編として,アルギニン試薬を用いるポストカラム蛍光検出法の特集です。

●ポストカラム蛍光法は,どんな時必要?

 50号でお話ししましたように,糖類の検出法にはいくつもの選択肢があります。 乱暴な言い方をしますと「甘い」と感じられるような糖濃度の試料では,まず第一に示差屈折率検出器が候補になります。 食品分野では一般的に示差屈折率検出器が広く用いられています。<br>  しかし,同じ食品でも醤油など醸造食品の場合はどうでしょうか?

 醤油中の糖類としては,グルコースが代表選手で示差屈折率検出器でも検出は可能なのですが,分析される方はむしろグルコース以外の微量糖(リボース,マンノース,アラビノース,ガラクトース,キシロースなど)がお目当てではないでしょうか? そうなると示差屈折率検出器では手に負えなくなります。 また,感度という点では電気化学検出器が考えられますが,醤油中には多量のアミノ酸が含まれており,この妨害のため分析は困難になります。 このような時,ポストカラム蛍光法が必要になるのです。

●アルギニン試薬によるポストカラム法とは?

 筆者らは,還元糖がほう酸存在下,塩基性アミノ酸であるアルギニンとの加熱反応(150℃)により強い発蛍光誘導体(励起波長340nm,蛍光波長430nm)を生成することを見出し1),この反応を応用したポストカラム蛍光検出HPLCシステムを構築しました。 図1はその流路図です。
 本法は,49号でお話ししました糖類の代表的な各分離法に適用することが出来ますが,ほう酸錯体陰イオン交換法と組み合わせるのが,最も効果的です。 ほう酸錯体陰イオン交換法は,単糖から2糖類の相互分離に優れた方法ですが,分離の効率化にはグラジエント溶出が必要であり,示差屈折率検出器が使えません。 このアルギニン試薬を用いたポストカラム蛍光検出-ほう酸錯体陰イオン交換法は,現在も広くお使いいただいています。

図 1 ポストカラム蛍光検出HPLCシステムの流路図

●アルギニン試薬のメリットは?

 還元糖のポストカラム蛍光検出法には,いくつかの方法がありますが,アルギニン試薬のメリットは何と言っても,簡単に手に入る,価格が手頃,安全性が高いということでしょう。

また,アルギニン法では非還元性2糖であるスクロースも検出できます。 還元性二糖のマルトースと比較して,感度的には1/10程度になるものの,スクロースが検出できることは大きなメリットです。

● More aboutアルギニン試薬

 その後筆者らは,アルギニン試薬を移動相に予め添加しておく方法を検討しました。 この方法では,ポストカラム法でしばしばその効率化が問題になるミキシング部や反応試薬送液ポンプが不要になり,より反応効率を高めることができ,かつ装置をシンプル化できると考えたからです。

検討の結果,ほう酸錯体陰イオン交換法では,移動相中のアルギニンが糖類の分離に何ら影響を与えることなく,反応コイル内で150℃に加熱されて効率良く反応することがわかりました。

●先程の醤油の分析は?

 さて,話は戻って先程の醤油中の糖分析ですが,このシステムではどんな分析結果になるのでしょうか。 図2は市販醤油の分析結果です。 グルコース以外の微量糖が検出されているのがわかりますね。
(Mk)

図 2 醤油の分析結果

 1) H.Mikami and Y.Ishida:Bunseki Kagaku, 32, E207 (1983).
 2) H.Mikami and Y.Ishida:10th International Symposium on Column Liquid Chromatography (1986).




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