GC分析の基礎

4. 試料導入

4.1. 試料導入量

試料注入量の目安は以下です。
注入量が多いと,ピーク形状が悪くなったり,注入口が汚れる等,トラブルの原因となります。

液体試料:1~2 µL 程度
気体試料:0.2~1 mL 程度

 

カラムへ導入される段階では,液体試料も気体になります。

  液体 1 µL →(気化)→ 気体 数100~1000 µL

  ⇒ キャピラリ分析の場合,試料をいかに効率よくカラムに導入できるかが重要です。

 

液体試料の気化体積

気化室温度250 ℃,圧力140 kPaにおける各種溶媒の気化体積

溶媒種類 注入量(µL)
1 2
イソオクタン 110 220
n-ヘキサン 140 280
トルエン 170 340
酢酸エチル 185 370
アセトン 245 490
ジクロロメタン 285 570
二硫化炭素 300 600
アセトニトリル 350 700
メタノール 450 900
1010 2020
 

4.2. 試料導入法

キャピラリ分析には,多岐にわたる試料注入法があります。

ホットインジェクション

  • スプリット:試料の大部分を排出して一部分をカラムへ導入する
  • スプリットレス:注入後1 ~ 2 minのみスプリットしない
  • 全量注入(Direct注入):スプリットする機構がない
 

コールドインジェクション

  • コールドオンカラム(OCI)
  • プログラム昇温気化 ( PTV )

 

参考情報

注入法別の適用可能試料と注入量・カラムの目安

 各注入法別に標準的な試料注入量とカラムを示します。

注入法 ホットインジェクション コールドインジェクション
スプリット スプリットレス 全量注入 コールド
オンカラム
プログラム
昇温気化
液体試料
気体試料 ※1
注入量 液体試料:2 µL以下
気体試料:1 mL以下
2 µL以下 液体試料:2 µL以下
気体試料:0.5 mL以下
0.5~2 µL 1~8 µL
カラム 内径,長さの
制限なし
内径0.25 mm以上 内径0.45~0.53 mm
のワイドボアカラム
内径0.53 mm×30 m
のワイドボアカラム
内径,長さの
制限なし

※1:低温付加装置を付けて,カラム初期温度を0℃以下にできれば,スプリットレス分析が可能な成分もあります。

シリンジ

 GCへの試料導入では,液体試料ではマイクロシリンジ,気体試料ではガスタイトシリンジを使います。

液体試料:マイクロシリンジ

気体試料:ガスタイトシリンジ

4.3. スプリット注入法

スプリット注入法はキャピラリ分析において,最も一般的で,適用範囲の広い注入方式です。
分離に最適なカラム流量(平均線速度)に設定でき,高分離な分析が可能です。
中~高濃度まで幅広い濃度の分析が可能で,比較的高濃度試料に向いています。

キャリアガスの一部は,セプタム下部から出てくる成分を除去するため,セプタムパージラインに流れます。残りは試料気化室内のインサートの中に流れますが,一部はカラムに,残りはスプリットラインに分岐(スプリット)されます。
この注入法では試料の大部分を排出して,一部分だけ,カラムに導入することになります。
試料の一部しかカラムに導入されないため,微量分析には不向きです。

 

概略図

スプリット比49の場合

【注意点】

  • スプリット比を小さくすると,注入口でピークが広がってしまい,分離が損なわれる場合があります。
  • 注入した試料の一部しかカラムに導入されないため,インサート内で気化した試料を均一にする必要があります。

⇒ガラスインサート内に必ずシリカウール等をセットします。
 試料によっては,ウールの量や位置を変えたりインサート内の詰め物を変えたりします。

 

4.4. スプリットレス注入法

スプリット法では感度が足りない低濃度試料に用いられる方法です。
キャピラリ分析の中では適用対象成分に比較的制限の多い分析法で,主に微量分析(数10ppm以下)で使用されます。

試料注入からスプリットラインを開放するまでの時間をサンプリングタイム(スプリットレス時間)といい,この間に導入されなかった試料は排出されます。カラムへの試料導入量は,[カラム流量×時間]で決定され,スプリット比とは無関係です。
サンプリングタイムにおいて,カラムの温度を試料の沸点より低くしておくことで,ピークの広がりを防ぎます。

 

概略図

スプリット比49の場合

【注意点】

  • 試料の残留やセプタム由来の化合物の影響を低減させるため、セプタムパージラインが必要です。
  • 昇温分析が必須です。
  • 気体試料や低沸点溶媒試料、溶媒近傍に溶出する成分には不向きです。
  • 溶媒よりも早く溶出する成分には適用が難しいです。
 

4.5. 全量注入法

全量注入法では,試料の全量をカラムに導入することが可能です。

内径0.45 mm以上のワイドボアカラムを全量導入法用の注入口に接続し,パックド分析のように,注入した試料のほぼ全量をカラムに導入する分析法です。WBCアタッチメントをパックドカラム用試料気化室に取り付けて分析する方法と,全量導入用の注入口で分析する方法があります。

 

概略図

【注意点】

  • WBCアタッチメントをご使用の場合,キャリアガス流量を8~10 mL/min以上に設定してください。カラム流量が少ないと注入試料がカラムに移動するのに時間がかかり,分離が損なわれる場合があります。
 

4.6. コールドオンカラム注入法(OCI)

面積値の再現性等の分析精度が高い分析法です。
GCの分析法の中で,最も試料の熱分解が少ない分析法です。
測定成分の濃度が低い試料が適します。(分析対象の濃度が一成分あたり約200ppm以下の試料に適します。)

試料溶媒の沸点以下に注入口温度を保っておき,キャピラリカラムの先端部分に,直接マイクロシリンジの針先を挿入し,試料を溶液のまま注入します。その後,注入口およびカラムを昇温することにより,注入成分をキャピラリカラム内部で直接,緩やかに気化させる試料注入方法です。キャピラリカラムの先端部分が気化室に相当します。

 

概略図

【注意点】

  • カラムに直接試料を注入するため,カラムが汚染されやすく,定期的なメンテナンスが必要です。
 

4.7. プログラム昇温気化(PTV)

試料注入時は,注入口を注入試料の溶媒の沸点以下に設定しておき,試料注入後,注入口を急速に昇温することにより,注入試料を気化させる注入方法です。
シリンジの針先に残る成分が暖められることによる組成変化(ディスクリミネーション)が少なく,熱に不安定な(分解しやすい)化合物の分析に適しています。

OCI分析とは異なり,ガラスインサートを用い,スプリット/スプリットレス分析ともに使用可能で,高濃度・低濃度試料に対応可能です。比較的不揮発性成分が多く含まれている試料を分析した場合でも,カラムの汚染が少ない分析法です。
キャリアガス流量制御に電子式フローコントローラ(AFC)を搭載したGCを使用すると,大量試料導入(LVI)も可能です。

 

概略図

【注意点】

  • 昇温分析が必要です。
  • カラムの初期温度は,注入試料溶媒の沸点以下に設定します。(PTVの初期温度とほぼ同程度)
 

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