5.1.GCのカラム

GCのカラムには,パックドカラムとキャピラリカラムの2種類があります。

 

パックドカラム

 

ガラスやSUSによる管でできた太くて短いカラムであり,GCの初期から用いられている。
ピーク形状がブロードで分離能力が低いがサンプルを大量に導入でき,汚れに強い特長も。公定法やガス分析などで今も使用されている。

キャピラリカラム

 

現在主流となっているカラム。
ピーク形状がシャープで分離能力に優れており,高感度分析にも向いている。

2つのカラムの断面図を見ると,パックドカラムは管の中に充填剤と呼ばれる粉末が詰められています。パックドカラムはGCの歴史の古くからあるカラムで,分析用途に合わせて非常に多くの種類が作られてきました。一方,代表的なキャピラリカラムは,細い溶融石英ガラス管の中に,薄く液相が広がっています。こちらはパックドカラムの後にでてきたカラムで,種類こそパックドカラムより少ないですが,飛躍的に分離性能があがっています。

 

パックドカラム

ステンレスやガラスなどの管の中に,粒子状の充填剤(固定相を含侵,塗布した担体,または吸着剤)をつめています。

 

内径:2~4 mm
長さ:0.5~5 m(2 mが最も多い)
充填剤:担体に0.5~25%液相(分配剤)or 液相無し(吸着剤)
液相:多種類有り

 

キャピラリカラム

代表的なキャピラリカラムは細い溶融石英ガラスの中に,液相や吸着剤を塗布,または化学結合させています。また,細い金属管を用いたものもあります。

 

 

PLOTカラム
(ポーラスポリマー/アルミナなどを固定)

 

WCOT or Chemical Bondカラム
(液相を塗布,または化学結合)

内径:0.1, 0.25, 0.32, 0.53 mm
長さ:5~100 m(30 mが最も多い)
材質:溶融石英ガラス
液相:分離が良いが,パックドに比べ種類は少ない

5.2. カラムの違いによる分析結果への影響

パックドカラムでは幅広(ブロード)なピークが、キャピラリカラムではシャープなピークが得られます。
キャピラリカラムのピーク高さはパックドカラムと比べて高くなり、より低濃度まで検出が可能です(検出感度が高い)。これはキャピラリカラムのメリットです。

また,ピークがシャープになることで分離されやすくなり,分析時間を短縮することも可能になります。

5.3. カラム選択の目安

成分の分離には,以下の要素が影響を与えます。

キャピラリーカラムの液相の分類

固定相の種類 極性 分離特性 用途 使用温度
範囲(目安)
メチルシリコン系 無極性 沸点順 石油,溶剤,高沸点化合物 -60~360℃
フェニルメチル系 微極性
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中極性
フェニル基含有量により芳香族化合物を保持 香料,環境,芳香族化合物 -60~340℃
シアノプロピルフェニル系 中極性
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強極性
含酸素化合物、異性体などの分離に有効 農薬、PCB、含酸素化合物
※FTD(NPD)での使用は避けた方がよい
-20~280℃
トリフルオロプロピル系 中極性
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強極性
ハロゲンを持つ化合物を特異的に保持 含ハロゲン化合物,極性化合物,溶剤 -20~340℃
ポリエチレングリコール系 強極性 極性化合物の保持が強い 極性化合物,溶剤,香料,脂肪酸メチルエステル 40~250℃

 

極性の選択目安

分析対象化合物の極性に近い性質を選択

無極性化合物の分析  無極性カラム
極性化合物の分析   強極性カラム

分析目的により選択

分析対象化合物の沸点差が大きい場合       無極性カラム
異性体のように化合物の沸点差が大きくない場合  強極性カラム

 

内径・長さ・膜厚の選択目安

必要な分離により選択

高分離が必要な場合          内径:細い,長さ:長い
分離が充分で分析時間を短縮する場合  内径:太い,長さ:短い,膜厚:薄い

分析目的により選択

低沸点化合物を分析する場合  長さ:長い,膜厚:厚い
高沸点化合物を分析する場合  長さ:短い,膜厚:薄い