LCMS-8050
食品などの残留農薬分析:LCMS-8050
一般財団法人 日本食品分析センター
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LCMS-8050
一般財団法人日本食品分析センター鳥海様,渡邊様,古賀様,小椋様に,残留農薬分析用途で導入いただきましたLCMS-8050についてお話を伺いました。
今回のインタビューでは,どのような農薬分析をされているのか,その中で弊社の装置を選定いただいた理由や使用感,また今後のご要望についてもお話いただきました。
Customer
微量試験部 農薬試験課
課長 鳥海 栄輔 様(写真右上)
主任 渡邊 文子 様(写真右下)
古賀 麻央 様(写真左下)
小椋 和彦 様(写真左上)
*お客様のご所属・役職は掲載当時のものです。
一般財団法人日本食品分析センター
URL
http://www.jfrl.or.jp/index.html
インタビュー
御社のHPを拝見すると,非常に様々な受託試験項目が掲載されています。
皆様の部署,農薬試験課ではどのような受託試験を担当されているのでしょうか?
食品を主として残留農薬を測る,というのがメインの業務です。飼料や土壌,水といった環境試料も一部取り扱っています。
分析項目は今主流になっている数百成分という農薬の一斉分析とターゲットを絞った個別分析と両方の手法に取り組んでいます。基本は定量分析です。一斉分析はスクリーニング法ではなく,基本的には多成分を全部定量するといった位置付けで行っています。
お客様からはどのようなご依頼が多いのでしょうか?
お客様のご依頼やご要望は,検査結果の使用目的から様々です。例えば,農薬の残留が疑われる場合の検査では早急に試験結果を必要とされています。そのようなご依頼に対して,私どもでは検査結果を可能な限り迅速にご提供するような体制を組み,ご要望に対応できるよう心掛けています。一方,研究,調査や定期的な品質管理が目的の場合には,検査費用をできるだけ抑えたいといったご要望もあります。その場合には,例えばHPに掲載されている項目を基本に,お客様のご要望に合わせカスタマイズした検査項目メニューを提案しています。このように,私どもではお客様からの様々なご要望に対し,できる限り沿えるような対応をしていきたいと考えています。どのようなご依頼の場合でも試験に関しては,日々の厳しい内部精度管理などにより正確な結果を提供することは私どもの根幹にありますので,最低限担保すべきことだと全職員が認識しています。
サンプルや分析項目も多岐に渡り,またお客様からも様々なご要望があるのですね。
検査ではどのような分析をされているのでしょうか?
基本的にはそれぞれの農薬に関連する通知試験法に準拠している部分が大きいです。それを元に分析センターで妥当性を確認しデータを取って変更した方法を採用することが多いですね。分析機器のスペックが上がってきてはいますが,やはりそれなりの前処理,精製工程を入れないと残留農薬はまだうまく測定できない場合が多くあります。水サンプルであればそれほど精製は必要ないが食品サンプルはいくつかの工程の精製が必要というように,扱うサンプルによって精製,前処理工程はだいぶ異なりますが,抽出液をそのまま装置で測定するということは今のところありません。正しい結果が得られるよう,何工程かの精製を必ず行っています。担当者が前処理から機器分析まで行います。日中に前処理をして作成した試験溶液を夕方以降に機器にかけて稼働させることが多いですね。担当の項目によって様々な機器を使っています。
分析機器はどのようなものをお使いでしょうか?
HPLC,GC,LC-MS,GC-MSといったクロマトグラフィー関連の装置は一通り使用しています。その中でも現在一番稼働率が高いのはLC-MS/MSですね。既存の農薬はもちろん,これから新規で分析する農薬についても,選択性を考慮しますと,まずは質量分析計での測定を試みるという流れがあります。質量分析計としてはGC-MSの方が先に立ち上がりましたが,当時GC-MSで測定していた多くの成分がLC-MSでも測定が可能になり,また,選択性に加え,一度の測定で定量と定性(確認)が同時にできるGC-MS/MSやLC-MS/MSは非常に普及率が高くなっていると思います。GC-MS(/MS)も他の機種と同様に毎日稼働していますが,ターゲットとしている農薬数としてはLC-MS(/MS)の方が多くなっています。
この検査項目はこの装置でしかできないとなるとトラブルがあった時に対応ができなくなるので,1つの項目を少なくとも2台以上の装置で分析できる体制を取っています。基本的にはこの装置で分析をする,と決めておき,他の装置でも分析できるように条件を入れています。特に一斉分析の条件は常に複数装置に準備しています。
質量分析計での分析が多く,HPLCやGCはあまり使われなくなっているのでしょうか?
そんなことはないですね。GCはLC-MS/MSに次いで稼働率が高いです。昔ながらの有機塩素系,有機リン系などのメジャーな農薬は今でもGCでの選択性や感度が十分にありますので質量分析計を使用する方が稀です。昔に比べれば少なくなりましたが,塩素系農薬は残留性が高いため未だに検査依頼をいただいております。
他の項目でもGCやHPLCの検出器の方が選択性や感度が良いという場合もありますので,あえて質量分析計に持っていかなくても良いという項目では今でも活用しています。多成分分析であれば質量分析計を使いますが,個別のターゲット分析であればGC,HPLCで分析する項目はまだたくさんあります。
農薬成分や分析内容により,最適な装置を活用されているのですね。
現在,LC-MS/MSの稼働率が一番高いというお話でしたが,使用頻度が高くなっている中で,装置にどのような性能が必要だとお考えですか?
選択性とやはり感度が重要です。未だに残留農薬の微量分析では前処理が必要になります。機器の感度があれば前処理を簡易にしても十分に希釈してサンプルを分析できるため作業が減り,分析全体にかかる時間も短くて済みます。精製操作をできる限り減らすためにも感度はあればあるほど良いですね。
またソフトウェアの操作性も重要です。多成分一斉分析だけではなく一斉分析できないような難しい農薬の個別分析もしています。農薬やサンプルに合わせて特殊な移動相を使うなど条件をいろいろと検討することがあり,その都度分析・解析条件を作成しています。多成分をルーチン分析する時には簡単な操作で済みますが,分析条件を頻繁に変える場合にはソフトウェアでの作業に手間がかかることがあり,もう少し条件作成や解析操作の微調整が簡単にできると良いと思います。
今回,既に複数台のLC-MS/MSをご使用の中,初めて弊社のLC-MS/MSを導入いただきましたが,LCMS-8050を選定いただいた理由をお聞かせいただけますでしょうか?
同じレベルと思われる機器をメーカー間で比較しましたが,感度差はあまり無かったと感じました。その中で1つは費用の面が選定の理由になりました。これはプラスのポイントです。ただし,最も重視したのがサポートを非常にしっかりしていただいているところです。定期的なサポートだけではなく,日々のサポートを含め島津さんは非常に充実しているという印象を私共は持っております。なにかトラブルがあった時に対処していただける,そういうところが決め手の1つになっています。装置をストップさせることなく使い続けられる安心感があります。今回セクションは変わりますが同時に3台導入しましたので,最初に入れる段階での部品やサポートについては3台同時というところも良かったと思っています。
またメンテナンスのし易さというのも選定項目の1つに挙げていました。今使っている他のメーカーの装置はメンテナンスのために部品を取り外すのが固い,重たいと大変だったので,選定の時にLCMS-8050のメンテナンス性を確認しました。シンプルにできるなという印象を受けました。
あとは以前から島津のHPLCを使っていたという点も大きかったかもしれません。蛍光検出器やUV検出器は島津の装置を使っていますが,送液ポンプは他社と比べて抜群に性能が良いです。他の装置では頻繁に消耗品を変えなければいけないものもありますが,メンテナンスをしなくても安定的に使えています。またキャリーオーバーも選定時に見せてもらいましたが他社と比較して全くありませんでした。洗浄機構やインジェクションの部分も抜群に良いです。
ありがとうございます。導入いただいて半年程ですが,実際にお使いいただいていかがでしょうか?
農薬の成分にもよりますが,装置の感度は想定通りというところです。これまで使っているLC-MS/MSがありますがメーカーにより相性の差があり得意不得意な成分はありますね。精製があまりできないサンプルがあると夾雑成分が多いものを注入することになるため,半年で2,3回メンテナンスを入れている装置もありますが,LCMS-8050はメンテナンスをほとんどせず導入時から感度低下や変動無く使えています。あとは分析条件を作成するとき,最適化から測定するまでの時間がとても早いですね。ただ多成分をルーチン分析するときはスムーズにできますが,個別に条件検討する場合や解析する場合に微調整が面倒なことがあるのでその点は改善してほしいです。
また島津さんの場合,分析条件を作るときの中身が見られない。ちょっと難しい成分でノイズの比や,二量体が出るかどうかなど,MSスペクトルを確認したい時に情報が奥に隠れてしまっているので,その辺りを簡単に確認できるようになると良いですね。試験溶液をセットして数分待つと分析条件ができ上がっているというのは使い勝手はいいと思いますし,定性分析をほとんどしていませんのでMSスペクトルライブラリに頼ることはほとんどありませんが,新しく条件を作るときの確認や,他の装置で使っていた条件を別の装置に移すときの確認などに使いますので,できるようになると良いですね。
貴重なご意見をありがとうございます。
その他LCMS-8050に限らず,ご意見ご要望がありましたらお聞かせいただけますでしょうか?
HPLCなど,これまで持っていた装置については日頃もう十分にサポートしていただいているので,今後LCMS-8050に何かあった時も手厚いサポートをお願いします。どうしても質量分析計は1,2年使っていくと部品も含め劣化もしてくると思いますので,的確なサポートをいただけると非常に助かります。教えていただいてメンテナンスなど自分でやれることはやりたいと思いますが,高感度な機種は我々が触れられない部分が多いのでどうしてもメーカー頼みというか鵜呑みにせざるを得ないところがあります。その辺りをいろいろと配慮していただけると助かります。あとは,四重極以外にも最近はTOF/MSが出てきているので,まだすぐに導入という訳ではありませんが今後新しい製品が出るのであれば紹介いただきたいです。
管理者側としては,5年10年後も同じ感度,同じスペックで使えると有難いです。新しい装置は性能がどんどん良くなっていきますが,導入した装置が数年後に同じ状態を保っているかというところが重要です。またこれは島津さんが,ということではないですが,PCの性能が段々追いつかなくなるというところも懸念していますので,改善されると助かりますね。
今後はまだ自動化できていないところを,視点を変えて自動化できるようになるとうれしいなと思います。標準溶液の調製から前処理も含めた作業でまだまだ人手が多くかかっているところがたくさんあります。
ご意見ありがとうございます。
LCMS-8050のサポートについては,ご要望に沿えるようできる限りの対応をしていきたいと思います。
また他のご意見につきましても今後の参考にさせていただきます。
本日は貴重なお話をどうもありがとうございました。
インタビュアーコメント
日本食品分析センター様は,残留農薬分析の分野でも非常に著名な分析機関ですが,今回お話を伺い,前処理から分析まで長い経験と深い技術をお持ちであり,分析機器についても様々な装置を数多く使いこなしていらっしゃることを改めて感じました。今回LCMS-8050について貴重なご意見を数多くいただきました。改善すべき点は今後の開発に活かしていきたいと思います。HPLC同様に,LC-MS/MSも高い評価をいただけるよう,ご満足頂いているサポート面含めこれからもしっかりと対応させていただきます。