薬局方 エタノール(消毒用エタノール)の試験(GC、FT-IR、UV)

エタノールは殺菌作用があり,消毒用エタノールとしてエタノールを至適濃度に調製した製品が販売されています。薬品として用いられるアルコールは薬局方の医薬品各条の確認試験法により試験することで品質が担保されています。消毒用エタノールに使用されるエタノールや無水エタノールの確認試験は三薬局方での調和合意に基づき規定されており,日本薬局方(JP),米国薬局方(USP),欧州薬局方(EP)でおおよそ同様の試験法が示されています。
確認試験 赤外吸収スペクトル測定法による同定
エタノールや無水エタノールの確認試験は,フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用いて対象試料のスペクトルと参照スペクトルを比較することにより成分の同定を行います。日本薬局方(JP)には液膜法による試験が記載されており,以下は液体セル(KRS-5窓板)を用いたエタノールと無水エタノールの測定例です。

エタノールと無水エタノールのスペクトル
アプリケーションニュース
薬局方に対応したエタノールと無水エタノールの確認試験
今回は和光純薬工業株式会社から販売されている日本 薬局方エタノールと無水エタノールを用いて測定を行ないました。
純度試験 揮発性混在物の分析
薬局方に準拠したエタノールの純度試験【GC|ガスクロマトグラフ】
エタノールの揮発性混在物はガスクロマトグラフィー(GC)を用いて試験します。不純物としてメタノールやアセトアルデヒド,アセタールやベンゼンを確認しており,規定されている2 vol ppm以下の微量ベンゼンの検出や,アセトアルデヒドとメタノールの良好な分離(分離度 1.5以上)を得るためには適切な装置構成で分析する必要があります。なお,消毒用エタノールの試験については「エタノール」の純度試験を準用するとされています。
消毒用エタノール 標準溶液(2)のクロマトグラム (3 回連続分析の重ね合わせ)
消毒用エタノール,試料溶液,標準溶液(1)~(4)のクロマトグラム
テクニカルレポート
GCによる日本薬局方 消毒用エタノールの分析
島津 Nexis GC-2030はキャピラリとパックド両方のカラムを搭載可能で,消毒用エタノールのアルコール濃度測定および純度試験に1台で対応可能です。
紫外吸光度試験 混在物の分析
紫外可視(UV-Vis)分光光度計で波長235 ~ 340 nmにおけるエタノール試料の吸収スペクトルを,水をリファレンスとして測定することで混在物の有無を試験します。240 nm,250 ~ 260 nmおよび270 ~ 340 nmにおける吸光度が,それぞれ0.40、0.30および0.10以下であることを確認します。

消毒用エタノールの紫外吸光度測定例
アプリケーション
紫外可視分光光度計を用いたエタノール中の混在物の測定
三薬局方(USP,JP,EP)に記載されているエタノール類の「他の混在物(吸光度)」 を測定しました。ソフトウェアの評価機能を用いて,薬局方に規定されている吸光度の自動判定が可能です。
消毒剤のアルコール濃度試験
アルコールベースの手指消毒剤で一定の性能を担保するためには,アルコール濃度の管理が重用です。米国疾病管理予防センター(CDC)は手指消毒剤に関して,60 %~95 %のアルコールを含む消毒剤が最も効果的であると推奨しています。また,日本薬局方の消毒用エタノールの項では,エタノールを76.9~81.4 vol%(15℃条件下)含む製品と記載しています。 USPとJPはアルコール濃度の測定法として蒸留法とガスクロマトグラフ(GC)法を示しており,GCを使用することで精度よくエタノール濃度を測定できます。また,フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用いるとより簡便にアルコール濃度を測定できます。
GCによるエタノール濃度測定のクロマトグラム
FT-IRによる消毒剤中のエタノール濃度とIPA濃度の測定例
関連システム
FTIRによるアルコール消毒剤アルコール含有量のスクリーニング分析
FTIRを用いることで,迅速で簡単にアルコール消毒剤中に含まれる成分の定量が可能です。LabSolutions™ IR に標準搭載されている機能を使用して,簡易合否判定が実施できます。

IRSpirit-X シリーズ
フーリエ変換赤外分光光度計(IRSpirit-Xシリーズ)
コンパクトボディながら,上位モデルから引き継がれたテクノロジーにより,クラス最高の感度と高い信頼性を実現。
標準搭載した専用プログラムIR Pilotにより誰でも簡単に分析をスタートできます。

Nexis GC-2030
ガスクロマトグラフ
先進的なインターフェイスを採用し,分かりやすくクリアなタッチ操作が可能です。工具レスで開閉できる新型注入口,ワンタッチ接続が可能なカラムなどの最新技術で日々のメンテナンス作業が容易に行えます。
FIDなど,すべての検出器で世界最高レベルの感度を実現。次世代フローコントローラによる卓越した再現性が,データの信頼性を高めます。