飲料ボトル缶の飲み口の形状/OLS・SFT -レーザー顕微鏡と長作動対物レンズの活用例-

ボトルの飲み口のように複雑な形状をもった試料には,作動距離が長い対物レンズ(長作動対物レンズ)が有用です。今回,長作動対物レンズを用いて飲み口の形状の観察を行なった事例を紹介します。

長作動対物レンズ

各種類の対物レンズは,一定の作動距離(Working Distance, WD)持っています。WDは焦点が合うときの試料面とレンズ先端間の距離です。したがって,試料の形状の大きさとWDの関係が合わずに観察できない場合が生じます。標準対物レンズの焦点が合う前に試料と衝突してしまう関係の模式図をFig.1(a)に示します。このような場合, Fig.1(b)の長作動対物レンズを使用することで目的の観察が可能になります。長作動対物レンズは標準レンズよりもWDが長く,試料の奥まった部位などでも観察が可能になります。
長作動対物レンズは,金属破断面やパッケージなどアスペクト比が高い試料に有効です。標準対物レンズと長作動対物レンズの一覧をTable.1に示します。

Fig. 1 試料形状と対物レンズ 作動距離の関係

Fig. 1 試料形状と対物レンズ 作動距離の関係

Fig.2 アルミボトル缶の飲み

Fig.2 アルミボトル缶の飲み

飲料ボトル缶の飲み口部

市販の飲料アルミボトル缶の飲み口部の写真をFig.2に示します。図に示した飲み口の内側の曲面部は飲料する際に,実際に唇が触れる部分です。この曲面部の形状観察を長作動対物レンズを用いて行ないました。

Fig.3 (a)飲み口部 内面側の3D-LSM像と(b)曲率計測

Fig.3(a)飲み口部 内面側の3D-LSM像と(b)曲率計測

ボトル缶の飲み口部の形状観察

飲み口の内面側の曲面部の3D-LSM像をFig.3(a)に示します。観察はFig.2に示した矢印の方向から行い,試料とレンズが衝突しないように長作動50×対物レンズを使用しました。また,広い視野での観察を画像貼り合わせを用いて実現しています。   
形状プロファイルからの曲率計測をFig.3(b)に示します。この飲料ボトル缶の飲み口部の内面側の曲面形状は,曲率半径Rが448μm,曲率(1/R)が 0.002/μmであることがわかりました。 
このように試料を切断加工せずに大きな形状をもった飲み口部の詳細な形状観察と計測が行なえました。

 

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飲料ボトル缶の飲み口の塗膜と形状
-透明膜対応レーザ顕微鏡の活用例 その3-
Shape and Transparent Coating of Drinking Spout of Beverage Bottle Can -Practical Examples of the Use of Laser Scanning Microscope Corresponding to the Transparent Film: Part 3-

 

3D測定レーザー顕微鏡

3D測定レーザー顕微鏡 OLS5000

3D測定レーザー顕微鏡

3D測定レーザー顕微鏡OLS5000の外観を示します。この装置は波長405 nmのレーザー光と白色LED光を使用することにより高分解能なレーザー観察像とカラー像が得られます。さらに三次元形状(3D)計測や粗さ測定を非接触で行うことができます。