カビ・酵母遺伝子の検出

カビ・酵母遺伝子の検出

マイクロチップ電気泳動装置によるカビ・酵母遺伝子の検出

 カビや酵母は環境中や自然界のあらゆる場所に存在します。 これらカビ・酵母は,みそ,チーズ,パン,ワイン,清酒などの食用として利用されるものから,われわれに病気を引き起こす原因となるものまで様々です。
 近年,カビ・酵母などの真菌類を分子生物学的手法で検出する方法の一つとして,PCR(Polymerase Chain Reaction)法が利用されています。
 通常,PCRを行う際は,カビ・酵母などの菌体(サンプル) からDNAを抽出する煩雑な前処理操作が必要となります。
 ここでは,PCRの前処理操作をすることなく菌体から直接,PCR反応が可能となるPCR用試薬 Ampdirect®Plus”DNA/RNA分析用マイクロチップ電気泳動装置 MCE-202 “MultiNA”を用いたカビ・酵母遺伝子の解析例をご紹介します。

<分析方法>
 サンプルは,Table. 1に示すカビ(2種類),酵母(1種類)を用 いました。Eurotium属は,乾物,パン,まんじゅうやジャムな ど,やや乾燥した食品に発生するカビです。Penicillium属は, アオカビとも呼ばれ,柑橘類,穀物や乳製品などの多くの 食品に発生するカビであり,食用としてチーズの製造に用 いられるものから,カビ毒を発生する有害なものまで,種 類は様々です。Saccharomyces cerevisiaeは,出芽酵母で あり,パン酵母,ワイン酵母,清酒酵母などがあります。
PCR反応試薬は,弊社の遺伝子増幅用試薬“Ampdirect®Plus酵素セット”を使用し,PCR反応条件は付属の取扱説明書 に準じました。
 寒天培地に培養したカビ・酵母をマイクロピペットチップ に付着させ,それをPCR反応液に懸濁し,PCRを行いまし た。(Fig. 1)
 PCRは,ITS領域(1)を検出するプライマー(日本薬局方(2)記載の遺伝子解析による微生物の迅速同定法の真菌用ITSプライマー)を用いました。

(1)ITS(Internal Transcribed Spacer)領域とは,リボソームRNA遺伝子 (rDNA)の18 S,5.8 S,28 S,これら3つの間2ヶ所(18 Sと5.8 Sの間 をITS1,5.8 Sと28 Sの間をI T S 2)にある領域です。菌種間でこの ITS領域の塩基配列に差があることが知られています。
(2)日本薬局方とは,医薬品の性状及び品質の適正を図るために定め られた医薬品の規格基準書です。

 PCR産物はMultiNAで分析しました。(Fig. 2)

Table 1 カビ・酵母サンプル

カビ: Eurotium chevalieri
Penicillium digitatum
酵母: Saccharomyces cerevisiae

Fig.1 ダイレクトPCR法

Fig.2 カビ・酵母遺伝子の分析手順

【 試薬/キット 】

  • Ampdirect®Plus酵素セット
  • DNA-500 Reagent Kit
  • SYBR® Gold nucleic acid gel stain
  • 25bp DNA ラダー

【 PCR産物分析条件 】

分析装置 : MCE-202 "MultiNA"
分析モード: DNA-500プレミックスモード

 カビ・酵母遺伝子のITS領域をFig. 1,2の手順に従い分析した結果をFig. 3に示します。
 カビ・酵母,それぞれに由来する遺伝子特異的増幅産物を明瞭に検出することができました。(図中エレクトロフェログラムのサイズ推定値は本実験によるものです。)
 MultiNAでの測定結果は電気泳動ゲルイメージとエレクトロフェログラムとして得られます。また,増幅産物のサイズ推定値はサイズ既知の標準サンプル(Ladder)を基準として検量線を算定,濃度推定値は既知濃度の高分子量内部 標準マーカ(Upper Marker)を基準として算出されます。 そのため,ターゲットとする増幅産物の判定が,アガロースゲル電気泳動より,さらに確実,かつ容易となります。

カビ・酵母遺伝子の分析結果

Fig.3 カビ・酵母遺伝子の分析結果

DNA/RNA分析用マイクロチップ電気泳動装置

マイクロチップを用いた電気泳動法により,DNAやRNAのサンプルを大きさによって分離し,DNAやRNAの核酸サンプルのサイズ(大きさ)確認やおおまかな定量を行います。マイクロチップを用いることによって電気泳動分離を高速に,蛍光検出により高感度に,しかも全自動で分析することができる電気泳動装置です。


 

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