藻類バイオマス研究におけるGC-MSの活用

藻類バイオマス研究におけるGC-MSの活用

藻類バイオマスは地球温暖化への意識の高まりから,石油資源に替わる新たな再生可能エネルギーとして注目が集まっています。藻類はトウモロコシやサトウキビなどに比べ,面積当たりの生産効率が高く,培養の際にはCO2や有機排水を利用できることから,空気や水の浄化という面でも期待されています。また欧米では,ジェット燃料のバイオ比率を高める政策が掲げられており,今後更にジェット燃料に相当するバイオ燃料の需要が大きくなることが予想されます。現状,原油に比べ生産コストが高いという課題はありますが,日本でも藻類バイオ燃料市場は2020年には8,000億円規模に成長すると見込まれています(ジェトロ,2013年)。
藻類から得られるオイルにはスクアレン(C30H50)が挙げられますが,重油相当の炭化水素である為,これをジェット燃料等に変換するには改質が必要です。

スクアレンとスクアラン

図1 スクアレンとスクアラン

ここでは,スクアレンを触媒で改質して得られるスクアラン水素化分解物をGC-MSで測定した例をご紹介します。
スクアラン(C30H62)はスクアレンに水素添加して得られる,分岐構造を有する飽和炭化水素で(図1),触媒作用により,スクアラン分子中のC-C結合が切断されることで水素化分解物が生成されます(図2)。

触媒によるC-C結合切断で得られるスクアラン水素化分解物の例

図2 触媒によるC-C結合切断で得られるスクアラン水素化分解物の例

スクアラン水素化分解生成物のTICクロマトグラム(図3)においても,主成分のスクアラン(C30)以外にC12~C29の炭化水素ピークが観測されていることから,触媒作用によって分解物が生成したことがわかります。また,赤枠で示したC12,C18,C23,C28のピークは,他のピークに比べて強度が小さいことから,この触媒反応プロセスにおいては生成されにくいと考えられます。このことは,この触媒作用により,スクアラン分子中の分岐と分岐の中間位置が選択的に切断され,分岐構造を保持した分解生成物が得られることを示しています。

スクアラン水素化分解物のTICクロマトグラム(EI)

図3 スクアラン水素化分解物のTICクロマトグラム(EI)

分解生成物の炭素数については,化学イオン化法(CI)を用いることで推定分子量より算出することが可能です。本分析の詳細については,アプリケーションニュース M270 「PCI-GC-MSによる炭化水素の分析」をご覧ください。
本検討の試料は,国立大学法人東北大学大学院工学研究科 応用化学専攻・環境資源化学講座・エネルギー資源化学分野の冨重先生から提供いただきました。

<参考文献>

Catalytic Production of Branched Small Alkanes from Biohydrocarbons

Shin-ichi Oya, Daisuke Kanno, Dr. Hideo Watanabe, Dr. Masazumi Tamura, Dr. Yoshinao Nakagawa and Prof. Dr. Keiichi Tomishige,

ChemSusChem, Volume 8, Issue 15, page 2421, August 10, 2015

 

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