AIRsight™
赤外ラマン顕微鏡AIRsightを用いた錆の分析
ユーザーベネフィット
- ラマン測定では金属酸化物の官能基が確認できるため、錆の種類を定性(同定)することが可能です。 - 蛍光X線測定では元素毎に異なったエネルギー位置にピークが確認できるため、多角的に金属を評価できます。
はじめに
金属の腐食によって生じる錆は、金属が付着物や空気と反応したことで生じる金属酸化物や金属水酸化物で構成されています。これら質量の重い原子で構成される無機化合物の分子振動は、有機物の振動に比べて低波数領域に現れるため、赤外分光法を用いて低波数領域における測定を行うには、遠赤外測定専用のビームスプリッタや乾燥空気もしくは窒素パージを必要とするなど、煩雑な作業が必要となります。一方、ラマン分光法では、標準的な仕様で測定できるため、金属酸化物などの無機化合物の定性には、ラマン分光法が有効です。なお、無機物の定性はエネルギー分散型蛍光X線分光法(EDX)でも行えますが、EDXとラマン分光法では定性方法が異なります。EDXではX線を試料に照射し、元素固有の特性X線や蛍光X線がエネルギーとして生じることを利用して元素を定性します。このため、EDXでは金属のような単体元素も定性することができます。ラマン分光法ではレーザーを試料に照射することで分子固有のラマン散乱光を計測し、レーザー波長とラマン散乱波長の差(ラマンシフト)から定性を行います。ラマン分光法は無機元素と酸素、窒素、硫黄などの結合を計測しているため(官能基分析)、金属単体ではラマンピークを得ることができません。 今回は、赤外ラマン顕微鏡AIRsightシステムを用いて、金属酸化物の標準品の測定例と実際の錆の測定例をご紹介します。また、実際の錆ではEDX-8100を用いた測定例も併せてご紹介します。
2024.02.20