LCMS-8050
LC/MS/MSを用いたクロザピンおよび2種の代謝物の新規血漿中濃度測定法の構築
ユーザーベネフィット
クロザピンおよび代謝物の血漿中濃度をもとにした治療薬物モニタリング(TDM)が推奨されており、本邦でもその有用性の検証が進められています。東北大学病院薬剤部では、精神科との共同で、クロザピンを含む種々の向精神薬のTDMの有用性を検証するための臨床研究を実施しています。本研究の一環で、クロザピンおよび2種の代謝物のTDMの有用性を検証すべく、液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法による、新規血漿中濃度測定法を構築しました。
はじめに
クロザピンは治療抵抗性統合失調症に適応を持つ唯一の治療薬であり、1989年に欧米で承認されました。日本では2009年に承認され、臨床使用されるようになりました。クロザピンの重篤な副作用として、無顆粒球症、発作、体重増加等が報告されており、これらの副作用発現がクロザピンの投与量や代謝物の血中濃度と関連することが知られています。 精神科領域におけるTDMに関するガイドライン「TheArbeitsgemeinschaft für Neuropsychopharmakologie undPharmakopsychiatrie consensus guidelines」4)では、クロザピンのTDMの実施が強く推奨されています。日本臨床精神神経薬理学会が本ガイドラインの和訳をホームページに掲載しており、本邦でも広く認識されるようになってきました。現在では、日常診療における向精神薬のTDM実施を目指して、その有用性の検証が進められています。 クロザピンは薬物代謝酵素チトクロムP450(CYP)によって、N-デスメチルクロザピン(norCLZ) 、およびクロザピンN-オキシド (CNO)に代謝されます。一部の研究グループが、クロザピンの血漿中濃度と薬物代謝酵素の活性に影響を及ぼす一塩基多型(SNPs)との相関解析を行いました8, 9) 。日本人を対象とした解析は症例数が限られているものの、このような研究においても、クロザピンと代謝物の血中濃度分析法が必要になります。 臨床現場で有用な、薬物血中濃度測定法の開発に際して、単に有効血中濃度範囲における測定にとどまらず、薬物併用による相互作用や薬物代謝酵素等の遺伝的要因に基づく 血中濃度上昇等にも対応可能な、広範囲の測定を可能とする測定法が求められます。 最近、我々のグループが報告した、イオン源で衝突励起解離を引き起こすインソース CID ( Collision InducedDissociation)による測定対象プリカーサイオン量調節を利用した検量線範囲の調節手法は、こうした多種の薬物及び代謝物の一斉分析に応用可能で、多くの疾患領域で、薬物血中濃度分析に応用されてきました。この手法は、オリフィス後方のイオンガイド電圧であるQarrayバイアスを調節することによって四重極が作る電場に流入するイオン量を調節する技術です。 今回、精神科領域において、インソースCIDによるイオン量調節を利用したクロザピンと代謝物の血中濃度測定法を開発したので、本アプリケーションノートで紹介いたします。
2021.12.21
関連製品
一部の製品は新しいモデルにアップデートされている場合があります。