卓上型MALDI-TOF 質量分析計を用いた獣毛類の定量分析

はじめに

マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計（MALDI-TOF MS）には、ペプチドやタンパク質、合成高分子など、様々な高分子サンプルの分子量情報を簡便・迅速に得られるという特長があります。この MALDI-TOF MSは、研究開発や品質管理の現場において、合成品や天然物の分子量確認等に広く用いられています。 MALDI の新たな用途の一つとして、動物種特異的な獣毛ペプチドを検出することによる獣毛の鑑別法が提唱されています 1)。この鑑別法は、「カシミヤ等獣毛繊維のペプチド法による試験方法」として、国際標準化機構（ISO）で承認され、ISO 規格に定められています 2)。この鑑別法は、1 本の毛であっても分析可能なため、カシミヤ偽装の防止のみならず、食品などへの混入異物検査にも応用できる可能性が考えられます。 ここでは、卓上型 MALDI-TOF MS の MALDI-8020 を用いて、獣毛の定量分析を行った例を紹介します。

2019.06.10