Curved Field ReflectronのPSDによるβAsp残基の識別(1)

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はじめに

蛋白質中のアスパラギン酸は,紫外線照射や加齢などにより五員環形成を経て異性化(イソアスパラギン酸;isoAspもしくはβAsp)することが知られています。この異性化はアスパラギン酸側鎖のC=O基と隣接残基のNH基間での結合が形成されることを意味するため,蛋白質の主鎖に不安定化をもたらし,ひいては立体構造の変化や蛋白質間の凝集を促すと考えられています。実際,白内障患者の水晶体中にはイソアスパラギン酸を含むαクリスタリンが存在することが報告されています。イソアスパラギン酸の検出・定量はおもにプロテインシーケンサーとHPLCで行われていますが,異性体同士の分離が困難であること,存在量が少ないことなどから,一般に解析は困難とされています。MALDITOFMSは微量の測定対象を解析するのに有効な方法ですが,異性体の残基質量は同一であるため,単なる分子量測定ではイソアスパラギン酸の検出解析は不可能です。ここでは,弊社独自の技術であるCurved Field Reflectronを搭載したTOFのポストソース分解(PSD)を利用することにより,βAspに特異的なフラグメントイオンを検出して通常のAspと識別した結果を報告します。

2011.04.26