小型MALDIデジタルイオントラップ型質量分析計 MALDImini™-1を用いた細菌芽胞の迅速同定

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はじめに

微生物の種を同定することは、感染症を引き起こす原因となった起炎菌に対する適切な抗菌薬の処方や、食品を腐敗させる菌の発生源の追跡につながります。近年、細菌や真菌の簡便・迅速な同定が行える、質量分析計 MALDI-TOF MS による微生物同定法が普及してきており、臨床微生物検査や食品・製薬などの産業分野における品質管理目的で、広く用いられるようになっています。しかしながら、MALDI による一般的な微生物同定法は、混合菌や芽胞状態の細菌には適用が容易ではないという制限があります。例えば、テロリズム対策としての、粉末化した炭疽菌芽胞の迅速同定への MALDIの適用は、現行のシステムでは困難という課題がありました。この課題を克服する手法の一つとしては、細菌のタンパク質をトリプシン消化して得られるペプチドを MS/MS 測定し、データベース検索することによりタンパク質を同定する手法が挙げられます。MS/MS によるタンパク質同定法は、タンパク質の由来となる生物種まで絞り込むことも可能なことと、複数のピークから特定のピークを選ぶことができるためタンパク質の混合物に対しても適用が可能なことから、MALDI による通常の微生物同定法と異なるアプローチで微生物同定が行える可能性があります。そこで、我々は、Fenselau らの報告 1)を参考に、トリプシンビーズを用いたタンパク質の迅速トリプシン消化と小型 MALDI デジタルイオントラップ型質量分析計 MALDImini-1 の MS/MS 機能を用いて、細菌の芽胞の迅速同定を試みました。

2020.06.10

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