トリプル四重極型LC/MS/MS によるリン脂質プロファイリング法の開発

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はじめに

リン脂質は,細胞膜構成成分として脂肪酸を内側に,極性基を外側に配向させて脂質二重膜を形成しています。リン脂質に結合する脂肪酸には生理活性脂質の前駆体であるアラキドン酸のほか,EPA や DHA などの多価不飽和脂肪酸が含まれ,多様な膜構造の形成に寄与しています。近年,リン脂質組成の変異と各種疾患との因果関係が報告されていることから,リン脂質のプロファイリング手法は疾患マーカー探索や疾患メカニズム解明の重要な手法として注目されています。 そこで,生体試料のリン脂質プロファイリングを目的とした MRM ライブラリー「LC/MS/MS MRM ライブラリー【リン脂質】」を作成しました。リン脂質はグリセロリン脂質とスフィンゴリン脂質に分類されます。リン脂質の MS/MS による定性分析では,コリンやエタノールアミンなどの極性基の脱離で生じるプロダクトイオンを検出することでクラス分けを行い,分子イオンから構造を推定します(Fig. 1)。本 MRMライブラリーでは,ホスファチジルコリン(PC),ホスファチジルエタノールアミン(PE),ホスファチジルセリン(PS),ホスファチジルグリセロール(PG),ホスファチジルイノシトール(PI),およびスフィンゴミエリン(SM)を対象とした 422 成分の MRM ライブラリー(1st メソッド)を用意しました。分析対象として考慮した脂肪酸の一覧を Fig. 1 右の表に示しました。1 回のクロマトグラフィーでリン脂質 422 成分のプロファイリングが可能です。さらに,脂肪酸の組み合わせを決めるために必要となる 867 の MRM ライブラリーを用意しました。まずは,1st メソッドによるリン脂質プロファイリングを行い,脂肪酸の組成解析が必要な場合は 2nd メソッドで分析して決定するというワークフローになります。また,867 の MRM ライブラリーを編集して 2nd メソッドを作成するために必要となる MRM 編集用ソフト「MRM Event LinkEditor」を用意しました。 本 MRM ライブラリーを用いることで,トリプル四重極型質量分析計によるリン脂質プロファイリングを簡便に行うことができ,脂肪酸組成解析をストレスなく行えます。

2016.07.03

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