UV TALK LETTER vol.8(2011) アプリケーション=多試料連続測定に有効なシッパーの紹介=

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紫外可視分光光度計を用いた溶液測定で使われる付属品のひとつとしてシッパーがあります。シッパーは試験管やビーカーなどから直接溶液を試料室に供給することができる非常に便利な付属品です。シッパーには,恒温機能の有無や標準必要試料量などが異なるさまざまな種類があります。今回は,各シッパーの特長,使用する際に注意すべき点についてご紹介します。

1. シッパーの種類と選択

 シッパーを用いて試験管から溶液を吸引している様子を図1に示します。シッパーは,レバーを押すと,試料の吸引が行われ,自動的に測定を開始する付属品です。シッパーには,いくつか種類があります。
 シッパーは,まず試料溶液の吸引方法によって大きく2つに分けられます。しごきポンプを使用するシッパー160とシリンジポンプを使用するシリンジシッパーです。さらに恒温機能の有無やフローセルの種類などで分類されます。シッパーの一覧を表1に示します。ここで標準必要試料量とは,直前の試料の影響を受けず測定ができる試料量です。

シッパー
図1. シッパーを用いた測定の様子

 

  付属品名 セル/恒温機能 標準必要試料量
しごき
ポンプ型
シッパー160L 標準形 2.0 mL
シッパー160T 3回パス形 1.5 mL
シッパー160C 恒温形 2.5 mL
シッパー160U 超微量形 0.5 mL
シリンジ型
(フローセル別売)
シリンジシッパーN型 常温タイプ 0.9/ 1.0/ 5.0 mL
(フローセルによる)
シリンジシッパーCN型 恒温水還流タイプ
表1. 各種シッパー一覧

 

 図2にシッパー160の外観を示します。シッパー160はユニットを試料室内に入れることができ非常にコンパクトです。シッパー160は,フローセルの違いにより4種類あります。

図3にシッパー160のフローセルの形状を示します。L形は標準形フローセルです。T形は3回パス形のフローセルを用いています。フローセルの形状が,ほぼストレートな構造になっているため吸入,排出時の試料の流れがスムーズです。また,C形は恒温形フローセルを用いて,一定温度での測定が可能です。U形は,微量用フローセルです。他のフローセルより微量の試料で測定が可能です。

シッパー160 外観図
図2. シッパー160 外観図

 

160L:標準形
(必要試料量 2.0mL)
160T:3回パス微量形
(必要試料量 1.5mL)
160C:恒温形
(必要試料量 2.5mL)
160U:超微量形
(必要試料量 0.5mL)
図3. シッパー160のフローセル形状

 

 UV-1800にシリンジシッパーを設置した外観を図4に示します。シリンジシッパーは吸引にシリンジを使用していますので極めて高い吸引量再現性(繰り返し精度:±0.03mL)を実現しています。シリンジシッパーの場合,まず常温タイプ(N型)か,恒温水還流タイプ(CN型)かを選択します。次にフローセルを標準必要試料量で選択します。通常は,標準必要試料量以上の試料を吸引し測定を行います。シリンジシッパーのフローセルは,交換が簡単にできることも特長のひとつです。このためメンテナンスも容易です。表2に,シリンジシッパーの推奨フローセルの一覧を示します。

図4. シリンジシッパーの外観

 

形状 光路長 透光部寸法 標準必要試料量
角型フローセル
(超ミクロ)
10mm φ2mm 0.9 mL
角型フローセル
(ミクロ)
10mm φ3mm 1.0 mL
角型フローセル
(セミミクロ)
10mm H11×W3.5 mm 5.0 mL
表2. シリンジシッパー推奨フローセル

 

2. 耐薬品性

 シッパーは,種類によって耐薬品性が異なります。
 シッパー160では,しごきポンプ部に塩化ビニル系チューブを使用しており,標準構成では強酸,強アルカリ,一部の有機溶剤が使用できません。このためオールテフロン製電磁弁ユニット,試料廃棄ユニットSWA-2をオプションとして用意しています。これらのオプションを使用することでさまざまな試料の測定が可能となります。
 シリンジシッパーは接液部がフッ素樹脂,ガラス,石英で構成されています。このため耐薬品性に優れ,ほとんどの試料の測定に対応可能です。

3. 気泡の発生しやすい試料の測定

 粘度の大きい試料などをシッパーで測定する場合,気泡が発生することがあります。フローセル中の気泡は,測定値に影響を与えますので気泡を発生させないことが重要です。気泡が発生する場合は,まず測定メソッドの吸引速度を遅くしてください。ほかに排出量を最小値(0mL)に設定することや安定時間を長くとることでも改善されることがあります。また粘度の大きい試料の場合,標準必要試料量では直前の試料の影響が大きくなることも考えられます。吸引量も多めに設定するとよい結果が得られるでしょう。

4. 自動連続測定

 シッパーは,オートサンプルチェンジャーASC-5と組み合わせると多試料連続自動測定が可能となります。最大100試料までの連続自動測定が可能です。図5にオートサンプルチェンジャーASC-5の外観を示します。ASC-5は,標準で試験管ラック,試験管が用意されていますがビーカーなどの標準以外の試料容器も使用できます。縦200mm×横200mm×高さ150mm以下の範囲で設置可能です。

オートサンプルチェンジャーASC-5の外観

図5. オートサンプルチェンジャーASC-5の外観

5. キャリーオーバーと標準必要試料量

 連続して試料測定を行う場合に,前の試料がフローセル内に残って次の試料測定に影響を与えることを「キャリーオーバー」といいます。
 シッパーでは,キャリーオーバーが1.0%以下になる試料の吸引量が標準必要試料量として設定されています。実際には,フローセルまでの吸引側チューブの長さによって必要な試料量は,変わります。このためASC-5を使用する場合などでは,標準必要試料量より吸引量を多くしなければならないこともあります。

 UV-1800,シリンジシッパーN型とミクロ角型フローセル(標準必要試料量1.0mL)を用いて取扱説明書に記述されている方法でキャリーオーバーの確認を行いました。表3にシッパーの設定条件を示します。試料は吸光度約0.5に調製した重クロム酸カリウム水溶液を使用しました。水(ブランク)と試料を3回ずつ350nmにおける吸光度を測定しました。測定は,「(1)水1」→「(2)水2」→「(3)水3」→「(4)試料1」→「(5)試料2」→「(6)試料3」の順で行いました。
このとき試料が水から試料に入れ替わった直後の「(4)試料1」と「(6)試料3」の吸光度差を「(6)試料3」の吸光度で割ったものをキャリーオーバーとして規定しています。キャリーオーバーがなければ本来「(4)試料1」と「(6)試料3」は測定誤差の範囲内で同様の値が出ます。しかし「(4)試料1」に直前の「(3)水3」の影響がある場合には「(4)試料1」は,「(6)試料3」より吸光度値が低くなります。

 

設定項目 設定値
吸引速度(mL/秒) 0.6
吸引量(mL) 1.0
排出量(mL) 1.0
安定時間(秒) 2
洗浄回数(回) 0
表3. シリンジシッパー設定条件

 

 図6に測定結果を示します。キャリーオーバーがほとんどないことが確認できます。
 次に水(ブランク)で,ベースライン補正を行い,「(a)試料」→「(b)水」の順に吸収スペクトルを測定しました。図7に測定結果を示します。「(b)水」のスペクトルには,350nmで吸光度0.001と吸収がほとんど認められません。表3のシッパー設定条件で精度のよい測定ができていることが確認できます。

350nmにおける測定結果
図6. 350nmにおける測定結果
図7. スペクトル測定結果(- :(a)試料 - :(b)水)

6. メンテナンス

 シッパーは使用後速やかに水あるいは洗剤を吸引して十分に洗浄してください。洗剤を使用した場合は,その後水で十分に洗浄してください。試料がフローセルに残っているとフローセルの汚れの原因となります。フローセルが汚れると気泡も発生しやすくなります。
 シッパー160では,フローセルの洗浄以外にしごきポンプ部のチューブの定期的な交換が必要となります。交換方法の詳細は,取扱説明書を参照ください。
 シリンジシッパーは,フローセルを含む接液部を十分洗浄していただくだけで結構です。

7. まとめ

 シッパーはセルに溶液を入れる手間を省き,連続で試料の供給ができる付属品ですが,通常のセルを使用する場合とは異なる点に注意しなければなりません。特に気泡の発生には注意が必要です。またシッパーの中でもシリンジシッパーは試料の吸引再現性や耐薬品性さらにメンテナンス性にも優れており非常に使いやすい付属品となっています。

⇒(関連情報)紫外可視分光光度計付属品選択ガイド 自動分析


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