超深海の生態系にまで及ぶマイクロプラスチック汚染の調査

Newcastle大学のAlan Jamieson博士にお話を伺いました。博士は,環境分野の開発と応用,特に海洋マイクロプラスチックが生態系に及ぼす影響の調査に取り組まれています。

今回のCustomer

Dr. Alan Jamieson
Newcastle University

※掲載内容(所属団体,役職名等)は取材時のものです。

Newcastle University様 Webサイト

インタビュー

Jamieson博士,本日は貴重なお時間をいただきましてありがとうございます。まず,博士の研究内容について教えてください。
また,これまでに得られた発見と成果についてもお聞かせください。


最深部の海溝6箇所で採集された3種の甲殻類の端脚類
(A)Hirondellea gigas,(B)Hirondellea dubia,(C)Eurythenes gryllus

私は,海洋の最深部,すなわち6000メートル以上の深さを意味する「超深海帯(ヘイダルゾーン)」の探査を中心に研究を行っています。海洋の最深部には大きな海溝がありますが,つい最近までその実態はほとんど知られていませんでした。私たちの研究の主な目標は,さまざまな海溝間における超深海帯生物の生態学,生息地,そしてそのつながりを調べることです。これまでに,深部にある9箇所の海溝の調査に成功しており,その中には地球の最深部も含まれます。調査の中で,多くの甲殻類の端脚類(ホッパー)サンプルを収集することに成功しました。

数年前,海の最深部における人為的影響を調査する最深部のサンプルに,非常に高レベルの残留性有機汚染物質(PCBおよびPBDE)が含有されていることを突き止めました。これは衝撃的であり,メディアを通じて世界中から大きな関心が寄せられました。その際,超深海帯動物にもプラスチック摂取の兆候があるのかというご質問を多くの方からいただきました。これはもちろん非常に大きな懸念事項であるとともに,関心の的となっています。

私たちは島津との共同作業により,最深部の海溝の6箇所で,数多くの超深海帯生物がプラスチックを摂取していることを発見しました。また,英国ミルトンキーンズのShimadzu UKと協力して,その素材の解析に成功しました。

「プラスチック」を深海最深部の研究材料にした主な動機は,まず,単純に人類の活動範囲を示すことと,陸上や海面付近で行われる活動は深海に影響を及ぼさないという認識を揺るがすことでした。「目に見えなければ気にならない」という考えは甘いのです。海洋に入ったものは,やがてはすべて沈んでいきます。海底に沈むと他に行き場所がなくなるので,どんどん蓄積していくのです。2つ目は,まだ十分に解明されていない生態系への影響について評価することです。この点における最たる懸念事項は,これらの生態系が手つかずの状態で調査するチャンスが失われてしまったことです。これらの生態系はすでに汚染されており,今になってようやく調査対象となりました。

島津をパートナーとして選んだ理由をお聞かせください。

このテーマは私たちが通常手掛けていた研究とは違ったので,ほぼ何もわからない状態でした。化学部のFTIR設備を使って微細な繊維の原料を解明しようとしていたのですが,この設備はその用途には適していないことが早い段階で判明しました。当大学は島津製品の長年にわたる顧客兼ユーザーであり,我々の技術者から島津の営業担当者であるDan Parnaby氏を紹介されて,島津の技術をどのように役立てられるか話をすることにしました。
Danは非常に親切で,ミルトンキーンズのBob Keighley氏を紹介してくれました。私たちがやろうとしていることや,島津の技術力を実証するためにBobがやってみたいことを話し合い,このプロジェクトで手を組むことにしたのです。さらに,Sky NewsもOcean Rescueキャンペーンの一環としてこの調査を取り上げることに強い意欲を示してくれたため,撮影クルーを島津の施設に呼び,調査をライブ撮影してもらいました。
島津はこのプロジェクトを非常に熱心に支援し,相互に有益な結果を得るために協力してくれました。

弊社装置はどのように役立っていますか?

英国ミルトンキーンズにあるShimadzu UK Limitedのラボ施設で赤外顕微鏡(AIM-9000)に接続されたフーリエ変換赤外分光光度計(FTIR,IR Tracer-100)を使用しました。繊維を1本ずつ手作業で取り,それをFTIR反射スライドに載せて反射法で測定,もしくは繊維をダイヤモンドセルで圧縮した後,透過法で測定を行いました。特に透過法では,非常に信頼性の高い結果が得られました。広視野カメラを使用して繊維を観察し,さらに調査が必要と思われる場所を特定しました。また,Wide-Band MCT(テルル化カドミウム水銀)検出器を使用して,透過モードや反射モード(約20秒間で50回のスキャン)で測定を行いました。各繊維について3点をスキャンし,それを島津材料ライブラリの結果と比較して,一致や類似の材料を探しました。珍しい構造の繊維のいくつかについてはさらに数箇所のスキャンを行い,化学組成を具体的に確認するようにしました。操作性の良さと結果を得るまでの速さに本当に驚きました。 

Shimadzu UK Limitedのラボ施設に設置されている赤外顕微鏡(AIM-9000)(右)と
フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR,IR Tracer-100)(左)

最後に、分析装置や計測機器のベンダーに対するご要望をお聞かせください。

このような技術の発展や用途について,研究者に情報を提供していただけると非常にありがたいです。とりわけ,FTIR顕微鏡測定など,特定の技術について最新情報を把握しておきたいです。

本日はお話しをお聞かせいただきましてありがとうございました。これまで以上に,皆様のご要望にお応えできるよう尽力してまいります。

Jamieson博士の研究内容については,こちらもご参照ください。

Shimadzu UK Limited

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Webinar FTIRと赤外顕微鏡を用いたマイクロプラスチックの分析

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