吸光度と検量線
分光光度計で測定できる吸光度を用いて、既知濃度物質との関連性をプロットすることで検量線が作成できます(図1)。これは一般に吸光度と濃度が比例関係にあることを利用しています1)。検量線を用いて、未知試料の吸光度を測定することで、未知試料の濃度を算出することができます。ここで未知試料の吸光度は、検量線で測定した吸光度範囲の中に入っていることが望ましいです。

図1 検量線の例
検量線で使用できる吸光度の範囲は、装置や波長により異なります。目安の1つは0.1~1Abs程度とも言われています2)注1。0.1Absは約80%Tに、1Absは10%Tに相当し、様々な誤差による影響の小さい範囲を推奨していますが、昨今の装置の進化による実際の例を示しますので、分析者自身で使用装置の状況を踏まえて判断して頂くのが望ましいと考えます。ここでは波長、検出器3)、シングル/ダブルモノクロメータ4)での違いに関して、実際の測定例を紹介します。
可視領域の試料として、重クロム酸カリウム水溶液を用意し、UV-1900i Plus(検出器:シリコンフォトダイオード)、UV-2600i Plus(検出器:光電子増倍管、シングルモノクロメータ)、UV-2700i Plus(検出器:光電子増倍管、ダブルモノクロメータ)での結果を図2~4に示します。なお、525 nmのピークを検量線では用いました。
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図2 UV-1900i Plus(検出器:シリコンフォトダイオード)での検量線
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図3 UV-2600i Plus(検出器:光電子増倍管、シングルモノクロメータ)での検量線
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図4 UV-2700i Plus(検出器:光電子増倍管、ダブルモノクロメータ)での検量線
0.1~1Absにおいてどの装置でも直線性が得られていることが確認できます。0.1Abs以下ですと、0.05Abs(約90%T)や0.02Abs(約95%T)でも直線性は得られていますが、小数点3桁目の変動を考慮すると難しい定量範囲になってくることが推測できます。 次に1Abs以上での可視光領域における検量線を測定した結果を図5~7に示します。
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図5 UV-1900i Plus(検出器:シリコンフォトダイオード)での検量線
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図6 UV-2600i Plus(検出器:光電子増倍管、シングルモノクロメータ)での検量線
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図7 UV-2700i Plus(検出器:光電子増倍管、ダブルモノクロメータ)での検量線
可視光領域の525 nmにおいて、3Absまでは直線性が得られているようにも確認できますが、4Absとなると装置によっては難しくなっていくことが分かります。 次に重クロム酸カリウム水溶液で545 nmのピークを用いた場合の1Abs以上での検量線を図8~10に示します。
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図8 UV-1900i Plus(検出器:シリコンフォトダイオード)での検量
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図9 UV-2600i Plus(検出器:光電子増倍管、シングルモノクロメータ)での検量線
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図10 UV-2700i Plus(検出器:光電子増倍管、ダブルモノクロメータ)での検量線
可視光領域の545 nmにおいて、3Absも装置によっては難しくなっていくことが分かります。波長によっても感度が異なるため、検量線の波長によって1Abs以上の吸光度を使用する場合は確認する必要があります。スペクトルで見た違いを図11に示します。高い吸光度で測定値が正しく取得できないのは、迷光の影響があります。迷光に関しては、「紫外可視分光光度計におけるシングルモノクロメータ方式とダブルモノクロメータ方式の特長」を参照ください4)。

図11 黒線:UV-2700i Plus, 赤線:UV-2600i Plus, 青線:UV-1900i Plus
次に紫外光領域での検量線で使用できる吸光度の範囲を確認していきたいと思います。紫外領域でも目安の1つとしては0.1~1Abs程度かと思います注2。紫外光領域の試料として、カフェイン水溶液を用意し、UV-1900i Plus、UV-2600i Plus、UV-2700i Plusでの結果を図12~14に示します。なお、273 nmのピークを検量線では用いました。
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図12 UV-1900i Plus(検出器:シリコンフォトダイオード)での検量線
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図13 UV-2600i Plus(検出器:光電子増倍管、シングルモノクロメータ)での検量
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図14 UV-2700i Plus(検出器:光電子増倍管、ダブルモノクロメータ)での検量線
紫外光領域においても0.1~1Absにおいてどの装置でも直線性が得られていることが確認できます。ただし可視領域と同じく0.1Abs以下になると、小数点3桁目の変動を考慮すると難しい定量範囲になってくることが推測できます。
次に1Abs以上での紫外光領域における検量線を測定した結果を図15~17に示します。
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図15 UV-1900i Plus(検出器:シリコンフォトダイオード)での検量線
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図16 UV-2600i Plus(検出器:光電子増倍管、シングルモノクロメータ)での検量線
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図17 UV-2700i Plus(検出器:光電子増倍管、ダブルモノクロメータ)での検量線
紫外光領域の273 nmにおいて、3Absは装置によっては難しくなっていくことが分かります。スペクトルで見た違いを図18に示します。

図18 黒線:UV-2700i Plus, 赤線:UV-2600i Plus, 青線:UV-1900i Plus
検量線で使用できる吸光度の範囲は、装置や波長により異なることがわかりました。目安の1つは0.1~1Abs程度であると確認しつつ、装置や波長によってどこまで利用できるか、分析者自身で判断いただければと思います。
1) 溶液試料 分光光度計の構造
2) 田中誠之, 飯田芳男、”機器分析(改訂版)”、裳華房
3) 検出器
4) シングルモノクロメータ方式とダブルモノクロメータ方式
注1) 吸光度を求める際に利用する透過率の誤差と濃度誤差の関係式(Twyman-Lothianの曲線)から、誤差が最小となるのが36.8%Tであり、そこから10~80%Tの範囲を推奨しています。なお、ここで誤差とは測定波長の誤差や読み取り誤差、ゼロ合わせ/100%合わせの調整誤差が考慮されています。
注2:日本薬局方において2.24紫外可視吸光度測定では、明確な吸光度範囲の規定はありません。ただし、参照スペクトルを確認すると1Abs以下が記載されています。