現在市販されているHPLCカラムの充填剤に使われる基材は主にシリカゲル、ポリマー、有機シリカの3種類です。それぞれ以下のような性質や特徴を持ちます。

シリカゲル

シリカゲルは安価であり、HPLCカラムとして高理論段数が得られやすく、機械的強度が高いことからHPLCカラムの基材として最も広く使用されています。シリカゲルをそのまま充填剤として用いる事もありますが、多くの場合はC18やC8などのアルキル鎖を化学修飾したものが充填剤として用いられます。シリカゲルは通常、アルカリ性の移動相を用いると加水分解により溶解してしまうため、使用可能なpH範囲が他の基材に比べ狭い(多くはpH2-7.5)のですが、近年は各カラムメーカーで様々な技術を用いてpHに対する耐久性を向上させたシリカゲルが開発されています。

ポリマー

ポリマーは通常、シリカゲルに比べ使用可能なpH範囲が広い(pH 0-14)ため、酸性や塩基性の移動相を使用するような分析(例:イオン交換クロマトグラフィー)のカラムや、サイズ排除クロマトグラフィー用のカラム基材として用いられます。使用されるゲルの種類によって親水性や疎水性など、多様なポリマーがあります。他の基材に比べpHなど化学的な耐久性は高いですが、理論段数や機械的強度がシリカゲルや有機シリカに比べて低い傾向にあります。

有機シリカ

有機シリカはシリカやポリマーと比べ比較的新しい充填剤の基材です。シリカの欠点であった化学的耐久性の低さや、ポリマーの欠点であった機械的強度を補った基材となっていて、頑健性の高いカラムとなるのが特長です。

 

 

これら三種類の基材の特長をまとめると以下の表の通りとなります。

項目\基材名 シリカ ポリマー 有機シリカ

機械強度
‒ 耐圧、分離に影響
高い 低い 高い
理論段数
‒ 分離に影響
高い 低い 高い
シラノール活性
‒ エンドキャッピング処理の有無などが影響一般的な使用可能 pH 範囲
多様 なし 多様
一般的な使用可能pH範囲
‒ カラムの化学的耐久性に影響
2-8 程度 0-14 1-12 程度
有機溶媒耐性 高い 多様 高い