移動相アセトニトリルをメタノールへ変更

吸光度

 メタノールはUV低波長側での吸収がアセトニトリルに比べて大きいため,検出波長によってはベースラインが安定しにくくなる,またはノイズが大きくなる可能性があります。 グラジエント分析時には,ゴーストピークがアセトニトリル使用時より大きくなります。

溶出力

 アセトニトリルとメタノールでは溶出力が異なり,水系との混合系の場合はアセトニトリルの方が溶出力が大です。 もし,アセトニトリルでの条件をメタノールに置き換える場合は,有機溶媒の比率を上げてお試しください。 一方,有機溶媒が100%かそれに極めて近い場合は,溶媒の性質(極性)が前面に出てくるようで,メタノールの方が溶出力が大きくなります。

分離(溶出)の選択性

 アセトニトリルとメタノールでは分離の選択性が異なり,分離度や溶出順序が変わることがあります。 有機溶媒分子の化学的性質(メタノール:プロトン性,アセトニトリル:非プロトン性)の違いによると考えられます。 メソッド変更時は分離に影響していないか注意が必要ですが,水/アセトニトリル系では分離できない成分を分離できるようになるといったケースもあります。

圧力

 メタノールはアセトニトリルより粘性が高いため,水/メタノール系は水/アセトニトリル系よりカラムにかかる圧力が高くなります。 水/アセトニトリル系の移動相条件をメタノールに置き換える際は,少なめの流量で流し始め,送液圧力をチェックしながら分析流量を決定してください。(メタノールをお使い頂く前に,カラム取扱説明書で使用可能かご確認ください。) 水/アセトニトリル系より有機溶媒比率を上げることになるので,メタノール比率が40~60%の場合は特にご注意ください

 

高性能で短いカラムへの乗り換え

概論

 既存LCシステムを活用して簡単に省溶媒化を実現する方法として,同一内径の短いカラムに変更する方法があります。 例えば下記例のようにカラム長さを1/2にした場合,分析時間が1/2になります。 同一充てん剤の短いカラムへの単純な乗り換えならば分離の悪化が生じますが,充てん剤粒子径を5μm から2.2μmに小さくすることで,分離を維持できます。(参照:Technical Report No.1「Prominence UFLCによる次世代のハイスループットLC」)

 【カラム乗り換え例】
 現在のカラム:150 mm L.×4.6 mmI.D.(Shim-pack VP-ODS; 粒子径5μm)
 新たに選定するカラム:75 mm L.× 4.6 mmI.D.(Shim-pack XR-ODS; 粒子径2.2μm)
 分析条件:グラジエント分析の場合,タイムプログラムの設定時間を全て1/2に短縮。
        送液ポンプの流速やサンプルの注入量は変更しない。
 グラジエントミキサ:グラジエント分析の場合,約半分の容量のミキサに変更する。
             (島津LCの場合,1.7mLに接続されていれば,0.5mLに接続変更)

注意点

 但し,すべてのピークに適用できません。比較的溶出の早いピークやピーク数が多い場合については,コンベンショナルLCと短いカラムとの組み合わせでは,配管や検出器セルによるカラム外拡散の影響で理論段数が低下,分離が悪化します。 分析条件の確定にメソッド移行プログラムテクニカルレポートNo.24と一緒にダウンロードできます。をお使い頂くと,適切な移行が可能かをご判断いただけます。 また,配管や検出器セルの影響については「高速分析への移行ポイント -システムと分析条件の最適化-」を参照してください。
 現在使用中のカラムと充てん剤の種類が異なる場合には,保持特性の違いにより分離パターンが変化することがあります。  

 溶媒消費量を1/2にする程度では,省溶媒化が十分達成できたとはいえない場合は,「3-2) 高速化」に従って,既存LCシステムを変更するとより分析時間の短縮が可能です。

HPLC移動相としてよく使われるアセトニトリルが入手困難,流通不足,在庫不足と言われています。溶媒消費量削減するため対策ページです。