コアシェル充填剤は、細孔を持たない(ノンポーラス) 中心部の「核-コア(core)」と、その核に官能基を有 した多孔質のシリカゲル層を化学的に結合させた「殻-シェル(shell)」の2つの部分から構成されています。

コアシェル充填剤の構造

Fig.1 コアシェル充填剤の構造

コアは無孔性であるため、比較的均一な粒子を作成することが可能です。その粒度分布は < 1 µmであり、一般的な多孔性充填剤の1/4程度であるとの報告があります。その上に、均一なシェル層を何層も重ねて多孔層とするため、粒子径はほぼ均一なものが形成されます。よって、コアシェル充填剤は多孔性充填剤よりも、粒度分布が狭く、これを充填したカラムからは高性能データが得られています。

コアシェル充填剤と全多孔性充填剤の違いについて

次に、コアシェル充填剤と一般的に広く使用されている多孔性充填剤との溶質の物質移動拡散の違いについて説明します。

Fig.2左側はコアシェル充填剤を溶質が移動する様子を模式的に示したものです。溶質は多孔性シェル部分のみを通り拡散しながら、官能基との相互作用を受けます。そのため、溶質が充填剤を移動する時間は短くなります。一方、Fig.2右側は全多孔性充填剤を溶質が移動する様子を示したものです。溶質は多孔質の部分を通るので、全多孔性充填剤の場合は充填剤の奥深く(模式図では充填剤中心部付近まで)浸透していくため行路が複雑で長くなり、拡散が大きくなりますので、結果的にピークが広がります。

Fig.2 コアシェルと全多孔性のイメージ図

Fig.2 コアシェルと全多孔性のイメージ図

コアシェルカラムの特長

コアシェル充填剤は上記の通り溶質の物質移動拡散が全多孔性充填剤に比べ小さいことから、以下のようなクロマト性能を示します。

  • ピーク形状の向上
    全多孔性に比べカラム内での溶質の拡散が小さく、シャープなピークが得られやすいです。
  • カラム負荷圧の低減
    コアシェルカラムは同じ粒子径の全多孔性カラムに比べると、移動相が流れる細孔の容積が全多孔性充填剤に比べて小さくなり移動相が受ける抵抗が減少し、結果として負荷圧が低減します。
  • 高速分析への適合
    コアシェル構造は多孔質層で分離が行われるため、全多孔性に比べて溶出が早く、同じ分析条件でも分析時間を短縮できる場合があります。
Shim-pack NovaCore C18-HB(コアシェルカラム)と他社カラム(全多孔性C18カラム)の比較

Shim-pack NovaCore C18-HB(コアシェルカラム)と他社カラム(全多孔性C18カラム)の比較

コアシェルカラムを用いた分析事例

粒子径5 µmの全多孔性ODSカラムを用いたCyanocobalamin(ビタミンB12の合成形)の定量分析法を、米国薬局方(USP) General Chapter <621> Chromatographyに記載されたメソッド条件の調整範囲内でShim-pack Velox C18 2.7 µmカラムを用いた分析法に移管しました。全多孔性ODカラムであるShim-pack VP-ODSの使用時は、シアノコバラミンのピークは5.163minに見られました。一方、コアシェルカラムShim-pack Velox C18の使用時は、同条件で2.368minにシアノコバラミンのピーク見えました。ガイドラインの調整範囲内で流量を変更することで、ピークの溶出時間は1.297minと大幅な分析時間の短縮となりました。
このようにコアシェルカラムを用いる事で分析時間や移動相溶媒消費量を削減できるケースがあります。

コアシェルカラムを用いた分析事例

当社のコアシェルカラムについて

当社は様々な用途に合うよう、二種類のコアシェルカラムをラインアップしています。

 

Shim-pack NovaCore C18-HD

Shim-pack NovaCore C18-HDは充填剤基材に有機シリカハイブリッドを用いたユニークなコアシェルタイプのC18カラムです。
有機シリカハイブリッドを用いる事で通常のシリカ基材に比べpH耐性が格段に向上しますので、メソッド開発において塩基性移動相を用いる事ができ、選択の幅が広がります。

 

Shim-pack Velox シリーズ

Shim-pack Velox シリーズは高純度シリカゲル基材を用いたコアシェル型のカラムです。pH耐久性は通常のシリカゲル基材のカラムと同等ですが、高いコストパフォーマンスを示します。また、固定相にはC18だけでなくBiphenylやPFPPのような分離パターンの異なる固定相をラインアップしています。