Shimadzu Chemistry & Diagnosticsは、20年以上にわたり安定同位体標識(SIL)化合物の研究開発を行ってきました。安定同位体比分析、合成中間体、代謝物、標準物質など、多様な安定同位体標識化合物の合成に関する豊富な経験とノウハウを有しています。

幅広い製品ラインアップとカスタム合成サービスにより、お客様のニーズに最適な化合物をご提供し、高精度な分析結果の取得とLC-MS/MS分析法の高度化をサポートします。

すべての製品は、NMR、HPLC、GC、MSなどの高性能分析機器を用いて評価し、詳細な分析証明書(CoA)とともに提供します。また、研究開発から製造、出荷までの全工程を一貫して管理することで、高い品質を確保しています。

日本においては島津ジーエルシーがShimadzu Chemistry & Diagnosticsの製品を取り扱っています。(一部取扱いをしていない試薬もございます。)

安定同位体標識化合物とは

安定同位体標識化合物(Stable Isotope Labeled Compound:SIL化合物)は、質量分析による定量分析で内部標準として使用される物質です。重水素(²H)、¹³C、¹⁵N、¹⁸Oなどの安定同位体が組み込まれている点を除き、非標識化合物と化学的に類似しています。

SIL化合物は、一般的に分析対象物と類似した物理化学的性質を持つため、抽出、分離、イオン化の各過程において、同様の挙動を示します。そのため、試料調製や分析時のばらつきを減らすことが期待できます。

その結果、測定の正確性が高まり、試料のロスや装置の変動によるデータのばらつきを抑えるのに役立ちます。

使用例

カテゴリー キーワード
安定同位体 安定同位体標識化合物、内部標準物質、重水素標識品、¹³C
標準物質 農薬、医薬品などの分析試験、分析法バリデーション
治療薬物モニタリング(TDM) 免疫抑制剤、抗菌薬、抗てんかん薬など

同位体とは?

同位体とは、原子番号(陽子の数)は同じで、質量数(陽子の数と中性子の数の合計)が異なる原子のことを指します。

水素の同位体

  水素(H) 重水素(2H、D) 三重水素(3H )
構成

水素

重水素

三重水素

    陽子、中性子、電子
質量数 1 2 3
放射能 なし なし(安定同位体) あり(放射性同位体)
天然存在比 99.985% 0.015% ごく微量

参考:天然水には、重水素(D)が水素原子に対して約0.015%(約150 ppm)含まれています。

主要元素の安定同位体と天然存在比

H C N O
質量 天然存在比 (%) 質量 天然存在比 (%) 質量 天然存在比 (%) 質量 天然存在比 (%)
1.0078
2.0141
99.9885
0.0115
12.0000
13.0034
98.93
1.07
14.0031
15.0001
99.632
0.368
15.9949
16.9991
17.9991
99.757
0.038
0.205
S Cl Br  
質量 天然存在比 (%) 質量 天然存在比 (%) 質量 天然存在比 (%)
31.9721
32.9715
33.9679
35.9671
94.93
0.76
4.29
0.02
34.9867
36.9659
75.78
24.22
78.9183
80.9163
50.69
49.31
 

参考:「Isotope(同位体)」は、「同じ」を意味するギリシャ語の「Isos」と、「場所」を意味する「topos」に由来します。

安定同位体標識(SIL)化合物

例:レベチラセタム(Levetiracetam)

Levetiracetam → [2H6]-Levetiracetam (Levetiracetam-d6)

SIL化合物の特性:

  • 物理化学的性質が元の化合物(非標識化合物)とほぼ同じ
  • 前処理による回収率がほぼ同じ
  • HPLCでの保持時間がほぼ同じ
  • MSでのイオン化効率(マトリックス効果)がほぼ同じ

安定同位体標識(SIL)

  • 第一世代:重水素(2H or D)標識

    • 合成が比較的容易で安価
    • 重水素の脱離(水素原子との入れ替わり)
    • 同位体効果による保持時間のずれ
    • ただし、同位体純度が低い場合や安定性も低い場合がある
  • 第二世代:13C / 15N / 18O 標識

    • 外的影響を受けにくい部位に導入できるため、化学的に安定
    • 高純度
    • 合成が複雑なため、高価

良いSIL化合物とは:

  • 高純度:未標識化合物の含有量が十分に低い
  • 標識数:未標識と重ならない数の導入
  • 標識位置:安定した位置に導入されている。プロダクトイオンへの導入
  • 標識種類:¹³Cの使用

FAQ

Q. 安定同位体標識化合物(SIL化合物)とは何ですか?

A. 安定同位体標識化合物(SIL化合物)は、重水素(²H)、¹³C、¹⁵N、¹⁸Oなどの安定同位体を含む化合物です。非標識化合物とほぼ同じ化学的性質を持ちながら質量が異なるため、LC-MS/MSやGC-MSによる定量分析の内部標準物質として広く使用されています。

Q. 安定同位体標識化合物はなぜLC-MS/MS分析に使用されるのですか?

A. 安定同位体標識化合物は分析対象物と類似した挙動を示すため、試料前処理時の損失やイオン化効率の変動を補正するために使用されます。その結果、LC-MS/MS分析における定量精度と再現性の向上が期待できます。

Q. SIL化合物と内部標準物質の違いは何ですか?

A. SIL化合物は内部標準物質の一種です。分析対象物と同一構造を持ちながら質量のみが異なるため、非同位体標識の内部標準物質と比較して、分析対象物とより近い挙動を示すため、前処理損失やマトリックス効果を補正しやすい場合があります。

Q. 重水素標識(D標識)と¹³C標識ではどちらが良いですか?

A. 用途によって異なりますが、一般的には¹³C標識の方が同位体効果の影響を受けにくく、保持時間の変動も少ないため高精度な定量分析に適しています。一方で、重水素標識は、化合物によっては¹³C標識体より安価で入手できる場合があります。

Q. 安定同位体標識化合物はどのような分野で利用されていますか?

A. 医薬品分析、バイオ分析、治療薬物モニタリング(TDM)、食品分析、環境分析、臨床研究など幅広い分野で利用されています。

Q. 良いSIL化合物を選ぶポイントは何ですか?

A. 高純度であること、十分な標識数を有すること、安定な位置に同位体が導入されていることが重要です。非標識体の含有量が低く、分析対象物と同様の挙動を示すSIL化合物が推奨されます。