MALDI-7090 - 特長
Matrix Assisted Laser Desorption / Ionization Time of Flight Mass Spectrometer
Multiplexプラットフォーム
Multiplexプラットフォームは高い汎用性と高効率を実現し,マルチユーザーに対して最小労力で結果が得られる「ウォークアップ」システムとして開発されました。
Multiplexは,最大10枚のMALDIプレートをセット可能なプレートローダー,2kHz超高速UVレーザーおよびマルチユーザー環境に対応したソフトウェアMALDI Solutionsを組み合わせることで,MALDI-7090の使用効率を最大限に引き出します。
Multiplexは,手動による分析のみならず,全自動ハイスループット分析が可能で,単一スポットの分析から,MALDIプレートにスポットしたLC-MALDIの分析に至るまで,あらゆるタイプの分析に対応します。
さらに,再利用可能なスチール製スライドガラス型MALDIプレート「FlexiMass™-SR」や,ディスポーザブルタイプのポリマー製スライドガラス型MALDIプレート「FlexiMass™-DS」にも対応します。
MALDI-7090は,一研究室における使用のみならず,共通機器室やオープンファシリティにおいても理想的なプラットフォームです。
MultiplexはMALDI-7090のワークフローを巧みに管理します。
装置ネットワークに接続されているすべてのワークステーションから,実験のセットアップ,データ処理および結果確認が行え,高効率で多用途なマルチユーザーインターフェースが構築されています。Multiplexのリアルタイム実験キューでは,ローダー内の特定のプレート位置が指定され,提示された測定実験の進捗状況をモニタリングすることで,LC-MALDIなどの自動分析の効率化を図ります。装置が他の測定を行っている間でも,分析用に準備されたプレートローダーからプレートの載せ替えが可能です。ローダーチャンバーでは,周囲環境の影響を受けやすい試料を保護するための窒素充填オプションもご利用いただけます。
最大限の信頼性を実現するよう設計されたMultiplexは,ハイスループット環境およびマルチユーザー環境の双方において,究極の柔軟性を提供します。
独自のイオン源設計
大口径イオン光学系
- 新設計のイオン引き出し光学系により,イオンビームの集束を最適化
- 長期間の使用に伴い生ずるイオン源汚染を最小限に抑制
- イオン源の洗浄およびメンテナンスの頻度を低減
独自の超高速固体UVレーザー
- MSだけでなくMS/MSモードにおいても2kHzの速度を実現した超高速固体UVレーザー
- さまざまなマトリックスや試料に対応する355nmの波長
- 10µmから100µm以上に至るまでの可変照射径
- 長寿命で高い信頼性
- 島津の先進技術による独自設計
フルHD試料表示画面
- きわめてクリアな画像を実現する最新の高解像度画像表示光学系
- MALDI試料スポットの高画質画像
- 10µm分解能での試料画像表示
- 長寿命LED照明でのフルHDカラー画像(1080p)
- ソフトウェア制御による焦点可変機能がさまざまな試料表面の画像表示に適応
TrueClean™
- UVレーザーによる全自動イオン源洗浄機能
- レーザーの反射光学系をソフトウェアにより駆動し,イオン源の洗浄を実施
- イオン源の取り外しや真空の解除を行うことなく,高効率かつ迅速な洗浄を実現
- イオン源の洗浄スケジュールを管理し,設定された時間に自動洗浄を実施
Hyper-MS2 翻訳後修飾解析
Hyper-MS2 — MS/MSの新たなスタンダード 島津のコア技術の集結
高分解能イオンゲート
MALDI-7090には,デュアルワイヤーのBradbury-Nielsen高分解能プリカーサーイオンゲートが搭載されています。近似の整数質量を有する化合物同士は,それら双方のプリカーサーからのイオンを含むフラグメントイオンスペクトルを示す場合がありますが,高分解能イオンゲートを使用することにより,整数質量が近接したイオン種に対しゲートを各々独立して開閉し,個別のフラグメントイオンスペクトルを得ることができます。
ASDF–比類のないMALDIタンデムTOFイオン分解能
ASDF-Axial Spatial Distribution Focussing(軸方向空間分布収束)は,MS/MSモードで比類のない分解能を実現する島津の特許技術(申請中)です。生成イオンの軸方向空間分布の抑制により,質量分解能が大幅に増大し,基本的にレーザーの出力レベルや試料の形状に左右されなくなります。
ASDFを用いたMALDI-7090では,MS/MSにおいて,Pulsed Extraction(遅延引き出し)法だけでは達成できない10000FWHM(半値全幅)の質量分解能を実現できます。
高エネルギーおよび低エネルギーフラグメンテーション
MALDI-7090におけるMS/MSフラグメンテーションは,真の高エネルギーCID(衝突誘起解離)(HE-CID)です。
イオンが,20keVのエネルギーでCIDセルに入射し,ヘリウムガスと衝突します。
さらに,ヘリウムとの衝突は,他の重いガス(空気またはアルゴン)に比べ,HE-CID(側鎖のフラグメンテーションなど)にのみ関連するイオンを最大効率で生成します。
さらに上記のフラグメントイオンに加え,すべての準安定フラグメントイオンもリフレクトロンにより質量分離・検出されることにより,MS/MSにおけるフラグメンテーションはより情報量が豊かなものになります。これによりサンプルの構造情報は最大限に引き出されます。