Xspecia™ - 特長
リチウムイオン電池正極材料向け化学結合状態解析システム
化学状態の評価ができる電池材料の例
電池正極材料種
▶ Mn, Co, Ni の一元系,二元系および三元系
様々な正極材の化学状態変化分析が可能
●Ni, Co, Mn の3 元系正極材料の充放電過程における状態変化
左図は,3元系正極材料中のNiおよびCoの状態変化をXspeciaでとらえたものです。初期状態(充電前)から50%充電状態,100%充電状態,50%放電状態を経て100%放電状態(再初期状態)へと変化する過程を観察しました。この過程において,Ni周辺の化学結合状態変化の大きさが際立っています。初期状態と100%放電状態では約3価を示し,100%充電状態では約3.6価へ変化しています。それに対してCo周辺の状態変化量は約0.2価相当であり,CoよりもNiのほうが電荷補償への寄与が大きいことがわかります。
右図は,同じ試料を放射光施設(SPring-8,BL14B2)でXAFS測定した結果です。初期状態(SOC-0)では3価のLiNiO2に近いXANESスペクトルが得られ,100%充電時には吸収端がさらに高エネルギー側にシフトしており,Xspeciaから得られた結果と同様の傾向を示しています。

Energy [eV]
●Li 過剰系正極材料の化学結合状態変化
Xspecia を用いて,Li過剰系正極材料LiXNi0.2Mn0.6O2 の充放電過程における化学状態変化を評価しました(右図)。この正極材料は,リチウムイオン電池の高容量化に向け,層状岩塩型構造における遷移金属層の一部をLiで置換したものです。初期状態,50%充電,100%充電,100%放電(再初期状態)の4つの状態でMnとNiの化学結合状態を評価したところ,充放電状態に対応する化学状態変化が観測されました。この結果は,XANES測定による同様の評価*と良い一致を示しています。
*Kun Luo et al. J.Am.Chem.Soc. 2016.138,11211-11218
充放電に伴う正極材の価数変化
超高分解能なポリクロ分光方式
試料にX線を照射した際に生じる蛍光X線を,スリットを介して結晶の各位置でエネルギー毎に分光しライン検出器で検出します。この方式は『ポリクロ分光』と呼ばれ,島津製作所の持つ独自のX線技術により実現したシステムです。最大の特長は,通常のWDX(波長分散型蛍光X線分析)よりも優れたエネルギー分解能です。これまでの蛍光X線分析装置では見ることのできなかった,化学状態変化による蛍光X線のエネルギーシフトを捉えることができます。さらに,駆動部を持たない光学系により安定した測定を実現します。
試料の状態変化を定量的に解析
Xspeciaは,優れたエネルギー分解能によって,化学状態変化によるケミカルシフトを検出することが可能です。このエネルギー変化を捉え『価数』という状態変化量へ変換します。この関係から,実試料の状態変化が定量的に直接分かります。
作業効率を高める一画面表示
Xspeciaのソフトウェアは①測定条件画面,②スケジュール画面,③スペクトル表示および結果画面,④装置状態画面が一画面上に全て表示されているため,全ての情報を一度に確認することができます。