粉博士のやさしい粉講座:実践コース

 

粉博士のやさしい粉講座
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実践コース:測り方疑問解決編
レーザ回折式粒度分布測定装置
29 回折・散乱光の光強度分布データの活用 その4
最近、様々な分野において研究開発・品質管理等の目的で、粒子径分布測定が頻繁に行なわれるようになってきました。レーザ回折・散乱法による粒子径分布測定では、多重散乱の影響を避けるため、濃度の低い状態(100ppm以下)で測定を行なっています。しかし、液体に懸濁した粒子やエマルジョンの中には希釈することにより分散状態が変化するものがあり、安定した測定が困難になることもあります。
また、これまでの粒子径分布測定の目的は粒子や粉体などの一次粒子を測定することが主でしたが、最近は、液中に分散させた時の分散状態が最終製品に大きく影響を及ぼす可能性が高いため、できるだけ原液に近い状態で粒子径分布を測定したいというニーズが高まっています。これらのニーズは、インク・塗料に限らず、化粧品・食品の中のエマルジョン粒子や2次電池の電極や電子材料(コンデンサなど)のスラリー状サンプルなど多分野に及んでいます。
SALD-シリーズの高濃度測定システムは、 最大20%(200,000ppm)の粒子濃度に対応しており、希釈せずに高濃度サンプルの測定が可能で、希釈による影響を受けることなく高濃度の状態で粒子径分布測定が可能です。
また、種々のセルを用いることにより、原液および希釈率を変化させた時の粒子径分布の評価が可能になります。
 
◆基本的な考え方
レーザ回折・散乱法で通常使用されるセルすなわち光路長が数ミリ以上のセルを用いた場合、粒子濃度を高くすると、図1(a)に示すように、粒子によって散乱した光が、他の粒子に照射され、多重散乱が起こります。多重散乱の影響が大きくなると、図2に示すように粒子径分布は微粒側に移行することが分かります。したがって、一般的なレーザ回折・散乱法を用いた粒子径分布測定では、数10~数100 ppmに粒子濃度を調整して測定することが必須になります。そのため、SALDシリーズでは、図1(b)に示すように、光路長をできるだけ短くすることにより、多重散乱の影響を小さくして、高濃度測定が可能になりました。使用するセルは市販のスライドガラス2枚を用い、サンプルを挟み込むことにより測定が可能になります。
中間的な粒子濃度の場合、通常のセルでは多重散乱が生じるが、高濃度セルを用いるには濃度が低すぎ、十分な信号が得られません。この場合は、図3に示すようなスライドガラスに窪みを作り、その深さ(光路長)を変えることにより、様々な粒子濃度領域での測定が可能になるセルを準備しています。表1に各種セルの光路長(深さ)を示します。
図4は、シリカ分散体(粒子径0.45µm)を用いて、様々な濃度を各種セルを用いて測定した結果を示しています。低濃度領域では短い光路長のセル、高濃度領域では光路長の長いセルを使用しています。このように、粒子濃度に応じて、適切な光路長のセルを用いれば、多重散乱の悪影響を抑制し、最適な測定が行うことが可能になります。
図1 高濃度測定の考え方
図1 高濃度測定の考え方
 
図2 試料濃度を変化させた時の粒子径分布の変化の重ね描き
図2 試料濃度を変化させた時の粒子径分布の変化の重ね描き
 
図3 くぼみセル
図3 くぼみセル
 
表1 各種くぼみセル
表1 各種くぼみセル
 
図4 粒子濃度と使用セルの関係
図4 粒子濃度と使用セルの関係
 
◆アプリケーション(1)
  W/Oエマルジョン
W/Oエマルジョンは、O/Wエマルジョンに比べ、希釈することにより分散状態が不安定になるケースが多いようです。
ここでは、通常濃度に希釈した場合と原液で測定した場合の粒子径分布を比較しました。 図5にサンプルをヘキサンで希釈し、30秒毎に経時変化の測定を行った結果の重ね描きを示します。これを見ると、時間と共に粒子径分布が刻々と変化し、150秒後には、希釈直後に比べ、5倍程度粒子径が大きくなっていることが分かります。これは、希釈によりって、分散状態が不安定になり、凝集および合一が起こっていると考えられます。  
図5 W/Oエマルジョン希釈した場合の粒子径分布の経時変化
図5 W/Oエマルジョン希釈した場合の粒子径分布の経時変化
 
次に、SALDシリーズ高濃度測定システムを用いて、原液サンプルの測定を行いました。粒子濃度が10%程度であるため、セルには通常のスライドガラスを用いて測定を行いました。測定結果を図6に示します。また、再現性を確認するため、同一手順で3回測定を行い、表2にまとめました。粒子径分布の測定結果は0.5µm程度で、良好な再現性も得られました。このように、希釈をすることにより、大きく分散状態が変化してしまうサンプルには原液のままでの測定が必須になると考えられます。  
図6 W/Oエマルジョン原液の粒子径分布
図6 W/Oエマルジョン原液の粒子径分布
 
表2 再現性の確認
表2 再現性の確認
 
◆アプリケーション(2)
  乳液(O/Wエマルジョン)
次に、サンプルに乳液を用いて、希釈率を変化させた時の粒子径分布の変化を確認し、図7に測定結果の重ね描きを示します。原液では、数µm程度の粒子も多く混在するブロードな粒子径分布ですが、希釈率を高くすることにより、分散が進み、0.5µmの単分散分布になり、数µmの粒子をほとんど含まない粒子径分布に変化しました。なお、各希釈率においては経時変化は認められませんでした。 
図7 希釈倍率を変化させた時の粒子径分布の変化の確認
図7 希釈倍率を変化させた時の粒子径分布の変化の確認
 
◆まとめ
ここでは、希釈したことで大きく分散状態が変化するもの、徐々に変化するものなどの測定例を紹介しました。
これまでの粒子径分布測定では、基本的に粒子径分布は希釈によって変化しないという前提のもとに、濃度が高ければ、単純に希釈すればよいという考え方もありました。
しかし、実際には粒子径分布が濃度に依存する場合も少なくなく、最終製品もしくは必要とされる濃度での測定が求められる場合があります。
このような場合、ここで紹介した高濃度測定がお役にたてると思います。
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