回折・散乱光の光強度分布データの活用 その4

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レーザ回折式粒度分布測定装置
26 回折・散乱光の光強度分布データの活用 その4
例えばポリスチレンラテックスの標準粒子のように非常に急峻な分布をもつ(分布幅が非常に狭い)サンプルを測定した場合、検出される回折・散乱光の光強度分布データは図1に示すようにファーストピークだけでなくファーストボトムが現れます。

図 1 ファーストピークとファーストボトム
粒度の分布幅と回折・散乱光の光強度分布データの関係を明らかにするために、表1および図2に示す平均粒子径は同一で、3つの異なる分布幅の粒度分布に対する光強度分布データを求めてみました。その結果を図3に示します。
平均粒子径が同一で粒度の分布幅だけが異なる実サンプルを用意することが困難なので、ここでは、平均粒子径2μm、屈折率1.60-0.1iの粒子を水に分散した場合に検出される光強度分布データをコンピュータシミュレーションによって求めています。分布幅は、図2に示すように平均粒子径に対して対称な3つの分布を想定しています。
また、回折・散乱光の検出光学系のモデルとしては、レーザ回折式粒度分布測定装置SALD-2300と同等のデータを用いています。
表1 分布幅の条件
No マーカ 分布幅
1 急峻な粒度分布
2 やや広い粒度分
3 広い粒度分布
図 2 分布幅の異なる粒度分布
図 2 分布幅の異なる粒度分布
図 3 回折・散乱光の光強度分布データの比較
図 3 回折・散乱光の光強度分布データの比較

図3より明らかなように、急峻な分布の場合は、ファーストピークだけでなく、ファーストボトムが現れていますが、分布幅が広がるとファーストピークは残るもののファーストボトムは消えてしまいます。さらに分布幅が広がるとファーストピークの位置も特定できなくなってしまいます。
15回折・散乱光の光強度分布データの活用 その2」で紹介したように、ファーストピークの位置(「センサの素子番号の何番目か?」)は、平均粒子径とほぼ1対1の対応関係をもっています。言い換えれば、ファーストピークの位置は、測定対象の平均粒子径によって変化するので、あらかじめ、基準となる複数のサンプルを測定し、「ファーストピークと平均粒子径の対応関係」を調べておけば、粒度分布の測定結果の妥当性を検証する手段として活用することができます。 さらにファーストボトムが存在すれば、非常に急峻な分布幅を持つサンプルであることがわかります。 また、ファーストピークがあいまいになってしまった場合、平均粒子径の情報は得られませんが、分布がかなり広いことだけはわかります。


このように、屈折率の条件や粒度分布の計算アルゴリズム(ソフトウェア)と関わりなく、回折・散乱光の光強度分布データから直接的かつ直感的に、粒度分布に関する重要な情報を抽出することができます。この情報に基づいて、測定結果として求められた(計算された)粒度分布データの妥当性を検証することができます。
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