粉博士のやさしい粉講座
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実践コース:測り方疑問解決編
レーザ回折式粒度分布測定装置
26 針状・繊維状粒子の測定
粒度分布は、通常、粒子径スケールに対する粒子量(積算または頻度)として表現されます。また、レーザ回折式粒度分布測定装置の測定原理「レーザ回折・散乱法」では、粒子が球形であると仮定して計算された回折・散乱光の光強度分布パターンに基づいて粒度分布を求めています。したがって、粒度分布測定では、常に粒子が球形であるという前提や仮定に基づいて測定が行われています。
それでは、図1や図2に示すような針状・繊維状粒子を測定した場合に、どのような結果が得られるのでしょうか。
図1 針状・繊維状粒子の例(1)   図2 針状・繊維状粒子の例(2)
図1 針状・繊維状粒子の例(1)   図2 針状・繊維状粒子の例(2)
結論から言えば、図3のような粒度分布の測定結果が得られます。ここでは、測定対象となる粒子群が、まったく同じ形状・サイズの粒子だけから構成されるという前提をおいています。この場合、測定結果として得られる粒度分布は、針状・繊維状粒子の短径が分布下限に、長径が分布上限にほぼ相当するような比較的広い分布となります。
図 3 針状・繊維状粒子を測定した場合の粒度分布
図 3 針状・繊維状粒子を測定した場合の粒度分布
これは、セル内部では、針状・繊維状粒子の方向がランダムであると考えられること、また、ある程度粒子の方向が一定であったとしても、SALDシリーズの場合、回折・散乱光を検出するセンサの形状が図4に示すように1/4円となっているため、結果的に一定方向のみの回折・散乱光を検出することにはならないからです。
図 4 SALDシリーズで採用している前方散乱光センサの形状
図 4 SALDシリーズで採用している前方散乱光センサの形状
(左;SALD-3100/2200/7000用 右;SALD-300V/200V ER用)
粒子群の中に、さまざまな形状・サイズの針状・繊維状粒子が含まれている場合、測定結果の分布範囲は、その中で最も小さな短径から、最も大きな長径へと広がります。
したがって、このような針状・繊維状粒子の場合でも、測定対象の粒子群に含まれる粒子の形状・サイズのばらつきが大きくなれば分布範囲は広がりますし、ばらつきが小さくなれば分布範囲は狭くなります。また、形状・サイズが大きく(長く)なれば、粒度分布は全体として大きいほうに移動しますし、また、形状・サイズが小さく(短く)なれば、粒度分布は全体として小さいほうに移動します。
同様に、針状・繊維状粒子が凝集していれば、粒度分布は全体として大きいほうに移動しますし、また、うまく分散していれば、粒度分布は全体として小さいほうに移動します。つまり、針状・繊維状粒子の分散・凝集状態を評価できるわけです。
このように、レーザ回折式粒度分布測定装置では、針状・繊維状粒子の長径・短径を個別に測定し、それぞれの分布を求めることはできませんが、粒子の特性に関する重要な情報を得ることは可能です。
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