粉博士のやさしい粉講座
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実践コース:測り方疑問解決編
レーザ回折式粒度分布測定装置
24 測れるものと測れないもの
レーザ回折式粒度分布測定装置において測定対象となる粒子は固体に限らず、液体や気体の場合もあります。この粒子は何らかの媒体(固体、液体、気体)中に存在します。レーザ回折式粒度分布測定装置で測定可能な粒子と媒体の関係を表1に示します。
表1 レーザ回折式粒度分布測定装置で測定可能な粒子と媒体の関係
表1 レーザ回折式粒度分布測定装置で測定可能な粒子と媒体の関係
◎広く実施されている。○一部で実施されている。△可能性はある。×不可能である。

固体粒子を液体中に分散させて測定する手法が最も一般的ですが、固体粒子を圧搾空気によって空気中に噴出・分散させて測定を行なう乾式測定手法も急速に普及しつつあります。
液体中に分散している液体粒子の測定もごく一般的に行われていますが、意外と知らない方も多いようです。エマルジョンの測定は広く行われていますし、牛乳、乳酸飲料の商品開発や品質管理にもレーザ回折式粒度分布測定装置が使われています。
さらに、最近は液体中の気体粒子すなわち泡の測定にも利用されるようになってきています。
さて、粒子と媒体の組合せとしては測定の可能性があっても、少なくとも以下の5つの条件を満たしていなければなりません。

 

1)粒子と媒体の屈折率が一致していないこと。
2.)媒体がレーザ光を透過すること。(透過率が90%以上)
3.)媒体中に測定対象以外の粒子が存在しないこと。
4.)粒子を含まない媒体が存在すること。(ブランク測定に使用するため)
5.)媒体中の粒子濃度が適正であるか、または適正になるように調節できること。

 

もちろん上記の5つ条件を満たしていても、実際に使用するレーザ回折式粒度分布測定装置の仕様、特長、オプションの選択によって、最終的には「測れるものと測れないもの」が決定されます。
例えば、媒体が液体の場合、どのような有機溶媒が使用できるかについては循環系に使用されている材質に依存するので、サンプラの仕様を確認する必要があります。

 

以下では、上記の5つの条件について説明します。

 

1) 粒子と媒体の屈折率が一致していないこと。
粒子と媒体の屈折率が完全に一致すると回折・散乱現象そのものが生じないため、屈折率が一致しないことが大前提となります。しかし、実際には、粒子と媒体の屈折率が完全に一致し、粒子が厳密な意味で透明になるというケースはほとんどないものと考えられます。
「ガラスビーズのような透明な粒子でも測定できますか?」という質問をよくうかがいますが、ガラスの屈折率と例えば水(媒体)の屈折率が一致するわけではないので測定は可能です。

 

2) 媒体がレーザ光を透過すること。(透過率が90%以上)
粒子、とくに微粒子から発せられる回折・散乱光は微弱であり、媒体の高い透過性が要求されます。

 

3) 媒体中に測定対象以外の粒子が存在しないこと。
レーザ回折式粒度分布測定装置の場合、多数の粒子(粒子群)に同時にレーザ光を照射し、個々の粒子から発せられる回折・散乱光が重ね合わされたものを検出して粒度分布を求めます。したがって、特定の粒子から発せられる回折・散乱光を選択して検出したり、除外することが不可能であるため、媒体中に存在する粒子は全て」測定対象になります。

 

4) 粒子を含まない媒体が存在すること。(ブランク測定に使用するため)
ブランク測定とは測定対象粒子以外のすべての要素から発せられる光の信号成分を確定し、バックグラウンドレベルとして差し引くためのものです。
固体粒子を液体に分散させて測定する場合、その液体を使ってブランク測定を行なえばよいわけなので、この問題の重要性を認識することはほとんどありません。固体粒子を圧搾空気で空気中に噴出・分散させて測定を行なう乾式測定の場合も、何も噴出させていない状態でブランク測定が可能なので特に問題はありません。しかし、もともと粒子が媒体中に存在する状態のサンプルが測定対象になるとき、意外に「粒子を含まない媒体」だけを入手することが困難な場合があります。媒体が液体の場合、フィルタを使って粒子を除去してブランク測定用の液体を作成しなければならない場合もあります。
さらに、フィルムに含まれる粒子が測定対象になる場合、粒子を含まない同一材質のフィルムが存在しないと測定ができないことになります。

 

5) 媒体中の粒子濃度が適正であるか、または適正になるように調整できること。
レーザ回折式粒度分布測定装置では、粒子濃度が重要な測定条件の一つです。
粒子が小さくなると、粒子一個あたりの回折・散乱光の強度が粒子径の6乗に比例して急速に弱くなります。しかし、十分な強度を得るために、粒子量を増やし、粒子濃度が高くなりすぎると、多重散乱が生じ、粒子径と回折・散乱光の強度分布パターンの関係が崩れ、正確な測定ができなくなります。
このように、正確な測定のためには粒子濃度を適正な範囲に調節する必要があります。これは、通常のフローセルや回分セルを用いる場合は、重量%で数10ppm~100ppm程度です。
固体粒子を液体に分散させて測定する場合、粒子を追加したり、液体(媒液)を追加して粒子濃度を調節することができます。固体粒子を気体中(空気中)に分散させる場合も、噴出させるノズルや圧搾空気の圧力を変えることで粒子濃度を調節することができます。
液体粒子を液体中で測定する場合、粒子は既に液体中に分散しています。適正範囲よりも濃度が高ければ、媒液で希釈すれば適正な濃度に調節することができます。適正範囲よりも濃度が低い場合には一工夫が必要になります。粒子の密度が媒液よりも高い場合に、遠心分離器にかけて、上澄みを捨てるという手が使えるかもしれません。
表1に示している組合せのうち、△になっているものは、粒子濃度を適正範囲に調節することがかなり困難な場合が多いように思います。
粒子濃度を調節する替りに、光路長を短くして多重散乱の影響を回避するという考え方もあります。これが高濃度サンプル測定システムSALD-HCシリーズです。

 
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