粉博士のやさしい粉講座:実践コース

 

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実践コース:測り方疑問解決編
レーザ回折式粒度分布測定装置
22 粒度分布の計算手法
図1 レーザ回折式粒度分布測定装置の基本的な光学系


図1 レーザ回折式粒度分布測定装置の基本的な光学系

図1に示すように、 測定対象となる粒子群にレーザ光を照射すると、空間的に回折・散乱光の光強度分布パターンが生じます。 このうち前方散乱光の光強度分布パターンは、レンズによって集光され、焦点距離の位置にある検出面に、リング状の回折・散乱像を結びます。これを同心円状に検出素子を配置したリングセンサで検出します。また、側方散乱光および後方散乱光は、側方散乱光センサおよび後方散乱光センサでそれぞれ検出します。このように各種検出素子を用いて光強度分布パターンを検出して光強度分布データを得ます。
この光強度分布データは、粒子の大きさによって変化します。実際のサンプルには、大きさの異なる粒子が混在しているため、粒子群から生ずる光強度分布データは、それぞれの粒子からの回折・散乱光の重ね合わせとなります。
この現象を数式(ベクトルとマトリクス)を用いて表現すると、

(1)


となります。ただし、
(2)(3)
ここで、s
は光強度分布ベクトルです。その要素s(i= 1,2, ・・・・・・m) は,リングセンサの各検出素子および側方・後方散乱光センサによっ検出される入射光量です。

qは粒度分布(頻度分布%)ベクトルです。

測定対象となる粒子径範囲(最大粒子径:x1,最小粒子径:xn+1)をn分割し、それぞれの粒子径区間は,[x i ,x i +1](j = 1,2,・・・・ n)とします。qの要素q(j= 1,2,・・・・n) は、粒子径区間[xixi+1]に対応する粒子量です。通常は、体積基準が用いられ
(4)

すなわち合計が100%となるように正規化(ノルマライズ)を行っています.。

Aは、粒度分布(ベクトル)qを,光強度分布(ベクトル)sに,変換する係数行列(マトリクス)です.。
Aの要素 ai,j(i= 1,2, ・・・・m,j= 1,2, ・・・・n) の物理的意味は、粒子径区間[xixi+1]に属する単位粒子量の粒子群によって回折・散乱した光の番目の素子に対する入射光量です。言い換えれば、この計数行列Aが回折・散乱現象そのものを表現しているわけです。
ai,jの数値は、予め理論的に計算することができます。これには、粒子径が光源となるレーザ光の波長に比べて充分に大きい(10倍以上の)場合、Fraunhofer回折理論を用います。しかし、それより小さい領域では、Mie散乱理論を用いる必要があります。Fraunhofer回折理論は、前方微小角散乱において、粒子径が波長に比べて充分大きな場合に有効なMie散乱理論の優れた近似であると考えることができます。
Mie散乱理論をを用いて、係数行列Aの要素を計算するためには、粒子および、それを分散させる媒体(媒液)の絶対屈折率(複素数)を設定する必要があります。さて、(1)式に基づいて粒度分布(ベクトル)qの最小自乗解を求める式を導出すると、
(5)

が得られます。ただし、AはAの転置行列であり、()-1は逆行列を表しています。
(5)式の右辺において、光強度分布(ベクトル)sの各要素は、リングセンサおよび側方・後方散乱光センサで検出される数値です。また、係数行列Aは, Fraunhofer回折理論およびMie散乱理論を用いて、予め計算しておくことができます。したがって、それらの既知のデータを用いて(5)式の計算を実行すれば、粒度分布(ベクトル)qが求まることになります。
この(5)式が、レーザ回折・散乱法において、光強度分布データから粒度分布を計算するための基本的な手法です。ただし、この式をそのまま実行するだけでは、かなり大きな誤差が生じるため、実際にコンピュータ上で実行される計算は、各種の条件を考慮した複雑なものとなっています。例えば、粒子量がマイナスの数値にならないとか、粒度分布はある程度連続的であるというような拘束条件を加えた計算になっています。

また、粒度分布の測定時あるいは再計算時に、屈折率を選択するということは、実際には、その屈折率を用いて計算された係数行列Aを選択しているわけです。SALDシリーズの場合、湿式測定では,媒体(媒液)の屈折率を水の屈折率に固定して、粒子の屈折率だけを選択する方式になっています。同様に、乾式測定では、媒体の屈折率を空気の屈折率に固定して粒子の屈折率だけを選択する方式になっています。

以上の説明のように、レーザ回折・散乱法を測定原理とするレーザ回折式粒度分布測定装置では、最初に測定(計算)されるのは、あらかじめ設定された粒子径区間毎の粒子量です。つまり、粒子径が測定(計算)されているわけではなく、粒度分布が測定(計算)されているわけです。
メディアン径や任意%粒子径、平均粒子径は、求められた粒度分布データから間接的に計算されているわけです。

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