「粒子の形状の影響による粒度分布の誤差はどの程度ですか?」という質問に出会うことがよくあります。測定対象(サンプル)が球形からかけ離れている場合、例えば針状のようなとき、このような質問をしたくなるようです。
この質問の背景には、球相当径に基づく粒度分布では不十分であり、粒子の形状を考慮した粒度分布を測定したいという要求(思い)があります。
レーザ回折・散乱法の場合、長径と短径だけで定義できる回転楕円体のような比較的単純な形状を想定するならば、将来的には、形状の情報を含んだ粒度分布の測定がある程度可能になるかもしれません。しかし、現実に存在する多種多様な粒子の形状に対応するためには、複数のしかもかなり多くのパラメータを必要とするため、実現は不可能です。
レーザ回折・散乱法とは全く別の原理を用いて、粒子の形状とサイズを一個ずつ正確に測定することが可能であるとしても、多くのパラメータで表現される粒子の形状およびサイズをどのように取り扱うかということが問題になります。
厳密に測定して、全ての粒子が異なるということになれば、分布という概念が導入できなくなります。つまり、粒子径(球相当径)の場合に、測定可能な粒子径範囲を適当な区間に分割し、その区間に含まれる相対粒子量の分布を用いているように、粒子の形状についても、適当な区間(区分)に分割(分類)しなければなりません。
このことは、理論的には可能かもしれませんが、実用的にはどうでしょうか。
現実の粒子の形状を、丸、三角、四角などのような単純な図形で分割(分類)できたとしても、その適用範囲は、ごくごく僅かでしょう。
また、粒子の形状をあまりに複雑に表現すると、実用性が損なわれます。現状の粒度分布は、横軸に粒子径、縦軸に相対粒子量という2次元のグラフで表現できます。長径と短径を用いる場合も3次元のグラフで表現できます。しかし、それ以上のパラメータで粒子形状を表現しようとすれば、グラフで表現することが不可能になります。複雑な数表としては表現できても、その内容を人間が把握できなければ、単なる数字の羅列であって、実用性があるとはいえません。
逆に粒子の形状を単純化してしまえば、現実の粒子の形状が表現できていないという不満が残るでしょう。結果的には球相当径を用いるのと五十歩百歩ということも考えられます。 |