粉博士のやさしい粉講座
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実践コース:測り方疑問解決編
 
レーザ回折式粒度分布測定装置
9 メーカ・機種間の粒度分布データの互換性
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古くなった装置を新しい装置に更新する場合や、原材料(粉粒体)を供給する側と購入する側で持っている装置が異なる場合、メーカ・機種間の粒度分布データの互換性が問題になります。
 
測定原理が異なれば、データの互換性が得られないのは、しかたがないとしても、レーザ回折式粒度分布測定装置(レーザ回折・散乱法に基づく粒度分布測定装置)を用いているのに、機種間の差異によってデータの互換性が得られないということは、なかなか納得しがたいものです。
 
メーカ・機種間のデータの互換性を左右する要因は、基本的には、前述した「測定結果を決定づける要因」と同一です。個々の要因における小さな差異の積み重ねが、全体として互換性を損なう結果をもたらす。
レーザ回折式粒度分布測定装置は、ここ10年の間に、測定範囲や分解能等の性能が著しく向上した。このような急速な発展・進化の状況で、新機種の開発に際して、100%のデータの互換性を保つことは困難です。また、メーカ間の技術的格差も増大してきています。
データの互換性・継続性を重視することには、落とし穴が存在することもあります。

既存の測定装置が測定範囲や、サンプラの循環機構の限界により、大きな粒子の存在を検出できていなかった場合、その測定結果との互換性を重視して新規の測定装置を選択すると、またしても正確な測定が達成されないことになります。

現実の問題として、メーカ・機種間の粒度分布データの互換性が得られる可能性が高いのは表2に示した条件が満たされた場合です。


表2 メーカや機種が異なっていても、粒度分布データの互換性が得られる可能性が高い場合の条件
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(a) サンプルの粒度分布が連続的(なめらか)であり、分布の幅がそれほど広くない
(b) 前処理の条件を可能な限り一致させる。分散剤や分散媒だけでなく、分散条件やサンプリング(分取・投入)条件についても、明確かつ定量的なな基準を設ける。
(c) 測定の際に設定する屈折率は、完全に同一の屈折率を単純に用いるのではなく、その機種において、そのサンプルを測定するときに最適な屈折率を選択する
(d) サンプルの粒度分布が、該当する機種の測定範囲の中央部分に位置 すること。測定下限や測定上限から離れていること。
 
粉博士イラスト さて、このように、メーカ・機種間にデータの差異が存在することも事実ですが、それ以外の要因に基づく差異を測定装置が原因であると誤解(誤認)しているケースも決して少なくありません。
 
まず、測定対象(サンプル)そのものの不安定性が原因となる場合があります。ロット間のばらつきや測定対象(サンプル)自身の変化・変質のために、同一の測定対象(サンプル)を異なった機種で測定しているつもりでも、異なった測定対象(サンプル)を測定していることになってしまうこともあります。
 
また、測定対象(サンプル)によっては、前処理条件に、極めて敏感なものがあります。さらに、分取・投入の手法を誤れば、母集団とは異なる分布を測定することになってしまいます。
 
データの互換性の評価に際しては、評価に用いる定量的な基準についても充分な考慮が必要です。広い分布のデータを、50%径(メディアン径)などの任意%粒子径で評価すると、データ間の差が、過大に評価されてしまいます。逆に任意粒子径%で評価すると小さくなります。急峻な分布のデータを、任意%粒子径で評価すると、データ間の差は小さく、逆に任意粒子径%で評価すると、差は大きくなります。
このように基準の用い方によって、同一のデータに関して異なった結論を導くことになる場合もあります。
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