粉博士のやさしい粉講座
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16 化粧品
日焼け止めクリーム
日焼け止めクリームは、紫外線防止化粧品または、サンスクリーンともよばれ、夏場の外出にはかかすことのできないものとなっています。とくに宮古島や石垣島など南の島を旅行する場合、海水浴でなくても、日焼け止めクリームをたっぷり塗っておかないと、肌が赤く炎症を起こし、のんびりとトロピカルな気分にひたることができなくなってしまいます。たまたま塗り忘れたり、何かでこすれて取れてしまった部分だけが赤くヒリヒリ痛むこともあるので十分にご注意ください。

日焼けの原因となるのは、中波紫外線UVB(280~320nm)および長波紫外線UVA(320~400nm)です。短波紫外線UVC(200~280nm)およびUVBの一部(290nm以下)は、オゾン層によって吸収されるため、通常日焼けの原因にはなりません。ただし、今後オゾン層の破壊が進めばば対策が必要になってきます。


UVBは、肌が赤く炎症をおこしたり、水泡ができる原因となり、UVAは、肌が黒くなったり、老化(しわやたるみ)の原因となります。


日焼け止めクリームには、紫外線を防止するために、少なくとも紫外線吸収剤と紫外線散乱剤の2つの成分が配合されています。

紫外線吸収剤は、主としてUVBを吸収し、他のエネルギー(りん光、蛍光)などに変換して肌への影響を防止します。

一方、紫外線散乱剤は、主としてUVAを散乱し、肌に到達することを防止しています。これは、全体としてはUVAを反射していると考えてももよいのかもしれません。この紫外線散乱剤としては、酸化チタンや酸化亜鉛などの超微粒子が使用されています。

日焼け止めクリームの広告にも「ナノサイズのUVカットパウダー」や、「超微粒子配合」等と記載されています。
 
図 1 粒子の大きさに依存する散乱光強度と方向  

図1  粒子の大きさに依存する散乱光強度と方向

図1に示すように、1μm以上の粒子では、粒子からの散乱光は、ほとんど前方に集中します。したがって、同じ波長の散乱光が前方に発せられるので、紫外線の防止効果はほとんど期待できません。ところが超微粒子になると、前方だけでなく、側方や後方にも散乱光が発せられます。この超微粒子が肌の表面に複数の層を形成すれば、複数の超微粒子による多重散乱現象となり、より多くの散乱光が側方や後方へと導かれ、高い紫外線の防止効果が期待できるわけです。

図2 日焼け止めクリームの粒度分布の即定例

図2 日焼け止めクリームの粒度分布の即定例
図2には、日焼け止めクリームの粒度分布の即定例を示します。1μm以下の粒子が、全体積の30%程度含まれていることがわかります。これが、紫外線散乱剤として機能するわけです。
また、原材料としての一次粒子では、もっと小さな粒子が含まれていて、それが最終的な製品においてはある程度凝集しているという可能性もあります。
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