MS50周年記念特設サイト - あなたのMSとのストーリー 審査結果
あなたのMSとのストーリー
● 最優秀賞
大阪大学 工学研究科 生物工学専攻 教授
福﨑 英一郎 様
研究分野:
メタボロミクス,代謝工学, 代謝プロファイリング, 食品機能科学
受賞メッセージ:
島津MS50周年おめでとうございます。
今回,最優秀賞に選ばれたことは,望外の喜びです。
これからも島津のGC-MS,LC-MSの助けを借りて,国産のメタボロミクス技術を世界中に発信していきますので,ご支援お願いします。
「これなら,世界と勝負できる」
島津装置との出会い
私は,大学を卒業後しばらく民間企業に勤めた後,1995年から大阪大学の教職につき,現在にいたっています。現在,GC-MS,LC-MSを基盤としたメタボロミクス研究室を主宰していますが,大学に着任して最初に購入した研究装置は島津のGCMS-QP5000でした。その数年後に,LCMS-QP8000を購入しました。現在の私のメタボロミクス研究は,この2台の質量分析計によってスタートしました。
その後,メタボロミクス研究の潮流を作ろうと奮闘してきましたが,日本においてメタボロミクス研究が知られ始めた2005年当時,世界においてメタボロミクスの研究論文は海外他社製のGC-MSを用いたものでした。日本の研究者が,日本のGC-MSを使って世界に負けない国産メタボロミクス研究をしたいと模索していたころにGCMS-QP2010 Ultraが近々オンステージする話を聞きました。その性能スペックを伺い,「これなら,世界と勝負できる」と確信し,島津の技術,営業の多くの方々と一緒にGC-MS Ultraの良さを日本の研究者に広めました。数年後に,メタボロミクス部門で用いられているGC-MSの日本国内シェアを海外他社から奪い島津が日本一になることができました。メタボロミクス研究主要国の中で島津がGC-MSシェア1位を占めているのは日本だけであり,これは今でも破られていません。
分析上のブレークスルー
私の研究室では食品メタボロミクス分野でいくつかのブレークスルーを達成してきましたが,その中でも,LCMS-8040を用いた「醬油に含まれるジペプチドの網羅的な分析」および,LCMS-8060を用いた「食品中に含まれるD-アミノ酸の網羅的分析」の二つは特筆すべきものです。これまで,国内外で数々の受賞をしてまいりましたが,それらのすべては島津の質量分析計を用いた研究成果の結果であり,本当に感謝している次第です。
島津製作所や質量分析技術の発展への期待
質量分析は,バイオ研究において極めて強力な計測手段ですが,まだまだ改良すべき点は多いと思います。感度向上はさることながら,特にダイナミックレンジの拡大に期待します。また,イオン化サプレッションによる定量性の低下をなんとか解決する新技術を熱望します。世界一の島津LCをさらに生かすMSの開発を待っています。
● 最優秀賞
中国薬科大学 教授
許 風国 様
研究分野:
医薬品毒性学,メタボロミクス
受賞メッセージ:
「あなたのMSとのストーリー」の最優秀賞をいただき,光栄に思います。2003年に「中国薬科大学―島津薬物・薬物代謝解分析共同実験室」が設立されてから,私は島津の質量分析計と共に成長し,研究において強力なサポートをいただきました。今後はメタボノミクス解析分野において島津との更なる連携強化を期待しています。
「島津質量分析計と共に成長(2003~2020)」
島津装置との出会い
2002年に大学を卒業し,中国薬科大学分析試験センター薬物分析専攻の修士課程に進学しました。2003年,ラボでは初の液体クロマトグラフ質量分析計LCMS-2020が導入され,そこから島津質量分析計と共に成長する旅が始まりました。質量分析計の高い選択性と感度により,ゾルミトリプタンとクレンブテロールの体内分析法(J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci.2004; J.Pharm Biomed Anal.2005)を構築し,最初のSCI論文を発表しました。その後,極性物質のODSへの保持が弱いことと両性物質の質量分析の応答性が低いことといった課題を解決するため,FMOC-CLによる誘導体化法に基づくフドステインの体内分析法を構築し,J Mass Spectrom (2006)で論文発表しました。
2008年,博士号を取得してからシンガポール国立大学でメタボノミクス研究に取り組みました。2012年に母校の中国薬学大学に戻り,薬物動態学の研究グループを立ち上げ,最初に島津のLCMS-8040とGCMS-QP2010 Plusを導入しました。その後,ラボではLCMS-IT-TOF,LCMS-8060とGCMS-QP2020 NXも導入されました。
分析上のブレークスルー
私たちのラボでは,薬物応答性の個人差に焦点を当て,メタボノミクス分析方法の革新開発に基づいて,医薬品安全性早期警告システムの研究構想と方法論を構築しました。このように,世界トップレベルでの薬物毒性バイオマーカーの分析方法と評価技術を探索し,確立することができました。Analytical Chemistryをはじめとする多数のジャーナルで52件の論文を発表し,中国華僑連合会第6回華僑社会貢献賞-イノベーションチーム賞などの賞もいただきました。
島津製作所や質量分析技術の発展への期待
島津は世界で有名な分析装置メーカーの一つであり,また,質量分析計はメタボノミクス分析において最も重要な装置プラットフォームの一つであります。島津にはイメージングメタボノミクス技術、メタボノミクス解析技術,試薬キットやメソッドパッケージなどの分野における新製品や技術的知見を発表し続けることを期待しています。
● 最優秀賞
Faculty of Medicine, Cukurova University, Turkey
Dr. Nebile DAGLIOGLU
研究分野:
法中毒学
受賞メッセージ:
当社と島津は,2014年から共同で違法ドラッグ分析に関する研究に取り組み,トルコで島津の製品を用いてこれらの研究に積極的に貢献しています。島津のトルコにある総代理店であるAnt Teknik社をはじめ,島津の皆様に深く感謝するとともに,今後とも一層のご支援のほど心よりお願い申し上げます。
「私の島津MSとのストーリー」
島津装置との出会い
私が所属しているシュクロバ大学法医学毒性研究所では,約25年の経験を持つ専門の研究者たちがいます。当研究所では臨床および法医学の生体試料を使って,薬物乱用,治療薬,アルコールおよび農薬の分析を行っています。2015年に島津のLCMS-8040が導入されてから,日常的な分析に加えて,法中毒学に関する研究も行われ,国内外の法中毒学分野の学術雑誌で数多くの論文を発表してきました。
分析上のブレークスルー
2018年から,トルコ政府支援の下で,廃水試料中の違法薬物,アルコールおよびタバコ消費量を測定するための研究が行われてきました。現在,トルコの33の都市の廃水処理工場から得た試料の分析を日常的に行い,廃水中の新規精神活性物質の分析のためのLCMS/MS法を開発し,検証しました。本研究は第3回国際法医学毒性学会で受賞しました。
島津製作所や質量分析技術の発展への期待
お客様をサポートし続けるということを期待しています。特に,新しい装置や修理のための資金を確保できない途上国のラボへのサポートが重要です。島津グループ,特に,トルコにおける島津総代理店のAnt Teknikの皆様に感謝申し上げます。今後も積極的な支援を継続していただき,品質と生産性を向上させるために,私たちと法中毒分野でのコラボレーションをさらに深めていただきたいと考えています。
● 優秀賞
名古屋大学・高等研究院/大学院医学系研究科 准教授
財津 桂 様
研究分野:
生体分析化学・バイオインフォマティクス・科学捜査
受賞メッセージ:
島津製作所さまのMS 50周年記念という誠に喜ばしい年において,MSストーリーの優秀賞を頂戴したことを大変嬉しく思います。島津製作所さまの益々のご発展と,革新的な質量分析計の創出を祈念しております。
「未来を切り拓く,島津製作所の質量分析計 」
私が初めて出会った島津製作所の質量分析計はGCMS-QP5050だった。科学捜査研究所に入所したばかりの私が,GCMS-QP5050に試料を打ち込むとモニターに見慣れぬ数字が現れた。当時の女性上司が私の後ろから覗き込み,即座に「カフェインね」と言った時の驚きは忘れない。魔法使いみたいな装置だと思った。
そのたった1か月後,科捜研に新しい“魔法使い”,GCMS-QP2010がやってきた。新しい魔法使いは驚くべき感度を誇った。上司達が「凄い感度だ」と口々に言うのを聞き,技術革新を肌身に感じた瞬間でもあった。そして,この時からGCMS-QP2010は薬物事件を共に闘う相棒になった。
科捜研にずらっと並ぶ魔法使い達は圧巻だった。だが,この相棒達に最高の魔法を唱えてもらうには,日々のメンテナンスが欠かせない。科捜研の先輩方と夜遅くまで,ずらっと並ぶ魔法使い達のメンテナンスを行い,次の薬物犯罪に備えた。数々の薬物事件の解決にGCMS-QP2010が活躍した。
私が科捜研にいた10年間,GCMS-QP2010は真の相棒だった。今でもGCMS-QP2010を見ると当時を懐かしく思い出す。本当によい装置だった。
その後,私は名古屋大学に異動し,質量分析計を用いた研究を進めてきた。GCMS-QP2010 Ultraは私が初めてメタボローム解析を行った装置で,高速scan speedには本当に圧倒された。GCMS-TQ8040は高感度と高選択性を備え,メタボローム解析のプラットフォームとして数々の論文に貢献してくれた。そして現在,DPiMS-8060という前処理操作すら不要な次世代プラットフォームのおかげで,私の研究は大きく展開し,Analytical Chemistry誌の表紙を飾る研究成果に繋がった。次はどんな魔法使いが生まれてくるのだろう。島津製作所の質量分析計は,我々研究者の,そして日本の未来を切り拓く“新たな魔法使い”を生み出してくれると信じている。
島津製作所や質量分析技術の発展への期待
国際情勢の変化を受け,今後,我が国の国際競争力は試練の場を迎えるのかもしれません。
しかし,真の科学技術立国とは極めて精緻で高度な科学技術によって裏付けられるものだと感じます。島津製作所様の世界に秀でる質量分析技術は,科学技術立国・日本の一翼を担う珠玉の技術だと思います。我々研究者も島津製作所様と一丸となって,新たな技術の発展に取り組んでいける事を期待しております。
● 優秀賞
Directorate of Government Analytical Lab, Uganda
Mr. Musa K. Wakabi
研究分野:
犯罪鑑識科学,毒性学
受賞メッセージ:
世界中の島津GC-MSユーザーの中から,「あなたのMSとのストーリー」キャンペーンの優秀賞として選んでいただき,心より感謝いたします。豊富な情報と明確な確認機能を備えている島津トリプル四重極型ガスクロマトグラフ質量分析計は,食品の安全性,環境モニタリングおよび法中毒学において優れた分析結果を得ることを可能にしました。このたびの受賞の誇りを胸に,今後もより熱意と抱負を持って質量分析の旅を続けることを楽しみにしています。
「島津GC-MSによる分析結果が社会に貢献してきた」
島津装置を使った分析
近年,食品や環境の農薬汚染への関心が高まっており,より広い範囲かつ厳格な農薬モニタリングが必要となりました。使用される農薬の種類と量についての正確な情報を得るために,そして消費者を守り,農産物の安全性を保証するために,効果的な分析技術,残留農薬の同定が求められるようになりました。本研究所は,QuEChERS法を使って試料調製を行い,GC-MS/MSを用いてキュウリなどの野菜中の残留農薬の定量分析を行いました。島津GCMS-TQ8040の豊富なライブラリと装置の優れた性能により,一定流量( 1mL/min)のヘリウムキャリアガスで優れた感度と選択性が得られ,よい分析結果を得ることができました。結果,農薬はそれらの保持時間と標的の修飾イオンに従って同定されました。
社会への貢献
法医学研究所で働くことにより,島津のGC-MS/MSを10年間使用し,毒性化学物質の毒性学分析を行い,法廷での法的問題への回答を提供することができました。警察官が提供された化学物質による中毒の疑いのあるサンプルや関連事件の証拠を分析し,鑑定人として科学的証拠を提示することで,ウガンダの司法運営において中心的な役割を果たしてきました。
島津製作所や質量分析技術の発展への期待
今後も,島津がこれまでにない超微量,超高分解能の分析を可能にする効率的で頑健な装置を分析科学の世界に提供してくれることを確信しています。また,メンテナンス頻度の削減,長期的な運用コストの削減およびアップタイムの向上も実現できることを願っています。