歯科矯正線材の曲げ試験
歯科矯正線材の曲げ試験
歯科矯正材は患者の治療段階や矯正対象となる歯の状態によって、その材質や形状が適切に選択されます。一般的に、治療の初期段階では患者の歯の配列が整っていないため、弱い力を持続的に歯に与え、かつよく伸びる(塑性的な変形が生じにくい)材料を採用しますが、治療が進んだ段階では、歯並び調整のため部分的に歯を動かす必要があるため、剛性があり強い力を発揮できる材料が必要とされます。
ここでは、この治療過程の前期/後期で使われる代表的な線材の機械的物性(硬さ、変形など)を、簡便な「曲げ試験」の形で実施しました。
試料および試験条件
今回の試験に用いた試料はTable 1に示す3種類(試料A~C)です。歯科矯正治療において、一般的に試料A、Bは治療がある程度進んだ患者に対して使用するもの、また試料Cは治療初期段階の患者に対して用いられるものです。
試験は、精密万能試験機「島津オートグラフ AGS-X形」を用い、負荷は3点曲げにより実施しました。試験条件をTable 2に、また試験実施時の様子(試料部分)をFig.1に示します。また、試験を実施した試料数は各試料につき5本(n=5)としました。

Fig.2 曲げ試験 外観
Table 1 試料
試料名 | A | B | C |
---|---|---|---|
材質 | ステンレス鋼および それに類する合金 |
Ni-Ti系形状 記憶合金 |
|
試料寸法 | 断面形状 0.016×0.022 inch(長方形) |
Table 2 試験条件
1) 試験力計測 | ロードセル(1kN) |
---|---|
2)変位計測 | 試験機内臓変位計(クロスヘッド位置)による |
3)治具 | 3点曲げ試験装置(負荷・支持点R0.01,支持点スパン 12mm) |
4)負荷速度 | 10mm/mim |
5)試験温度 | 25℃ |
試験結果
試料A~C についての曲げ試験結果を、応力(曲げ応力:試験力から算出)とひずみ(変位量から算出) との関係として図示したものをFig.3 に示します(各試料について5本の結果を表示)。 これを見ると、それぞれの試料について極めて再現性良く特性が評価できていることが解ります。

Fig.4には、各試料の特徴を比較するため、試料毎の代表的な結果を重ねて表示しました。これによれば、試料AとBについてはほぼ同じ機械的特性であること、これに対し試料Cは最大応力が小さく伸びが大きい(すなわち“柔らかい”)ということが明らかであり、使用目的に応じた特徴がはっきり現れています。
※試料のご提供ならびにご指導は、北海道医療大学歯学部 准教授 飯嶋雅弘先生より頂いたものです。
特長
- 高精度ロードセルを採用(高精度形は0.5級、標準形は1級)
ロードセル定格の1/500~1/1の広い保証範囲。信頼性の高い試験評価をサポートします。 - クロスヘッド速度範囲
0.001~1000 mm/minの広範囲で試験可能です。 - 高速サンプリング
最高1 msecの高速サンプリング。 - オペレーションソフトウェア TRAPEZIUMX LITE X
効率を高めるシンプルなソフトウェアです。 - ジョグコントローラ(オプション)
クロスヘッド位置を手元で操作できます。ジョグダイヤルを用いることで微小な位置調整が可能です。 - 応用試験装置
ラインナップされている豊富な治具に取り替えることにより、様々な試験に対応可能です。