セルロースナノファイバー
セルロースナノファイバーが築く未来の世界
セルロースナノファイバー(Cellulose Nanofibers:CNF)は,「軽い」「強い」「硬い」といった物理的な特徴を有しており,素材として高機能である事に加え,複合材料の強化材として用いた際の軽量化が期待されています。化石燃料や無機物を原材料にした高機能ナノ素材に対し,植物バイオマスから作り出されるCNFは,環境適応性,安全性に優れていることはもちろん,性能面においても優位性が確認されています。
パルプにCNFを混抄したスピーカーの振動板は,ヤング率を向上させ,高音域の再生帯域を拡大し,より高音質な再生を可能にしました。また,ランニングシューズのミッドソールにCNFを添加することで,軽量化と優れたクッション性を実現。さらに,破れにくい使い捨ておそうじシート,速記してもかすれずにじまないボールペンインキ,ベタつかず瑞々しい感触を合わせ持つ化粧品,保水性の非常に高い美容用フェイスマスクへの応用など,身近な商品にCNFは使われはじめています。
今後,軽量高強度なCNF樹脂複合材料を活用した輸送機用構造材料,導電性の機能を付加した透明CNF基板など,CNFの活躍の場が広がっていくことが期待できます。
セルロースナノファイバーの形態観察
CNFの製造には、セルロースを機械的に解繊するグラインダー法などがあり、より大量のCNF を効率的に生産する上で解繊条件の最適化が求められています。そこで、これまで重要視されていなかった解繊途中の繊維に着目し、形態観察 を行いました。今回は、機械的解繊処理を行った繊維につい て、走査型プローブ顕微鏡(SPM)と走査型レーザー顕微鏡 (LSM)を用いた形態観察例をご紹介いたします。
試料には、広葉樹パルプシートを解繊処理し、水分散させたものを使用しました。解繊未処理の繊維と 1回解繊処理した繊維は、個々の サイズが大きかった為、LSM で観察しました。 2~5 回解繊処理した繊維は、SPM で観察し、平均繊維径を算出しました。 観察結果を図1 に示します。解繊処理の回数を経るごとに繊維がほぐれて細かくなる様子がわかります。
また、解繊処理を 5 回行って得られた繊維(図 1 下段右)につい て、SPM による高分解能観察(観察視野:250 nm×250 nm)を行いました。その結果は以下のアプリケーションニュースをご覧ください。
CNFは繊維径や繊維長や溶媒への分散性が種類によって異なります。また、表面にある官能基を修飾することにより、透明性や分散性など様々な特性を与えることができることから、自動車部材、電子材料、包装材料などへの応用が期待されます。ここではCNFの物性評価例を紹介します。
CNFは理論上、鉄鋼の1/5の軽さで5倍の強度と高い比強度 を有し、樹脂やゴムと複合材料化することで従来材料以上の特性を実現でき、炭素繊維に続く新素材として関心を 集めています。
ここではCNF複合材料の物性評価例をご紹介します