ガラスのリング曲げ試験
ガラスのリング曲げ試験 (規格番号:ASTM C1499-01)
はじめに
近年,スマートフォンやタブレット等,ガラスを使った携帯製品が増えています。携帯して用いられる品物は,曲げや落下等の外力に耐える強度が必要とされるため,ガラスも十分な強度が必要となります。ガラスにおいて代表的な強度は2種類あり,それぞれ別の方法で測定されます。ひとつは3点(または4点)曲げ試験により求められるエッジ強度です。ガラスは切断の際に,切断面に微小な傷(マイクロクラック)ができてしまいます。3点(または4点)曲げ試験では,この傷からの破壊によって強度が決まります。つまり,エッジ強度は破断面の傷の状態を示す指標といえます。もうひとつはリング曲げ試験により求められる面強度です。この方法ではガラスの中央付近から破壊が始まるため,切断面の影響を受けません。つまり,面強度はガラス面自身の強さを示す指標といえます。
本稿ではASTM規格に沿ったリング曲げ試験を実施し,ガラスの面強度を求めた事例を紹介します。
測定・治具など
![リング曲げ模式図](/sites/an.shimadzu.co.jp/files/ckeditor/apl/electric/c6nq2v0000027e2x-img/c6nq2v0000027e6z.jpg)
リング曲げ模式図
右図にこの規格で使用する治具の模式図を示します。この規格では測定や治具に関して詳細な規定がなされており,その一部を以下に示します。
- Ring先端の半径は,試験片の厚さの0.5~1.5倍に設定
- Load RingとSupport Ringの直径の比は0.2~0.5
- 低弾性率(E<100GPa),高強度(σ>1GPa)のものほど,直径の比を0.2とすることを推奨
- Load RingとSupport Ringの軸は,90°のVブロック等を用いてあわせる
- ガラスの割れ方を観察する場合は,Load Ring側にテープを貼り測定
ガラスのリング曲げ試験の評価項目である面強度は,ソフトウェアの任意計算式機能に数式を登録しておくことにより,自動的に算出できます。
測定結果
![](/sites/an.shimadzu.co.jp/files/ckeditor/apl/electric/c6nq2v0000027e2x-img/c6nq2v0000027e79.jpg)
![]() |
ガラスのリング曲げ測定システム
試験機 :AGS-X
ロードセル :1 kN
試験治具 :リング曲げ用試験治具,飛散防止カバー
ソフトウェア :TRAPEZIUM LITE X
特長
- 高精度ロードセルを採用(高精度形は0.5級,標準形は1級)
ロードセル定格の1/500~1/1の広い保証範囲。信頼性の高い試験評価をサポートします。 - クロスヘッド速度範囲
0.001~1000 mm/minの広範囲で試験可能です。 - 高速サンプリング
最高1 msecの高速サンプリング。 - オペレーションソフトウェア TRAPEZIUMX LITE X
効率を高めるシンプルなソフトウェアです。 - ジョグコントローラ(オプション)
クロスヘッド位置を手元で操作できます。ジョグダイヤルを用いることで微小な位置調整が可能です。 - 応用試験装置
ラインナップされている豊富な治具に取り替えることにより,様々な試験に対応可能です。