サイズ排除クロマトグラフィー(Size Exclusion Chromatography;SEC)は溶液中の分子サイズのちがいを利用して成分を分離します。図1にSECによる分離のメカニズムを示します。使用するカラム内の充てん剤には、細孔が数多く存在します。さまざまなサイズをもつ成分の分子がカラム内を流れていく際、小さなサイズの分子は充てん剤細孔の奥まで浸透しながらゆっくり流れ(図1右)、大きなサイズの分子は細孔に入れずにカラム出口へ流れていきます(図1左)。その結果、カラムから溶出順は、大きなサイズの分子ほど速く、小さなサイズの分子ほど遅くなり、分子の大きさによってふるい分けされます。これがSECによる分離の原理です。

図1 サイズ排除クロマトグラフィーのメカニズム
左:分子サイズの大きな化合物
右:分子サイズの小さな化合物

サイズの大きな分子が細孔に全く入れず素通りするときの溶出容量(保持時間)を「排除限界」、サイズの小さな分子がすべての細孔に浸透しきって溶出するときの溶出容量を「浸透限界」といいます。その他の相互作用が起こらない場合には、すべての成分は排除限界と浸透限界の間に溶出します。

SECには大きく分けると2種類あります(表1)。一つは疎水性充てん剤と非水系(有機溶媒)移動相を用いて合成高分子の分子量分布を測定する方法で、「ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography;GPC)」と呼ばれます。もう一つは親水性充てん剤と水系移動相を用いて、多糖類やたんぱく質などの水溶性高分子の分離分取あるいは分子量分布を測定する方法で、「ゲルろ過クロマトグラフィー(Gel Filtration Chromatography;GFC)」とも呼ばれています。また、水系SECとも呼ばれています。

表1 測定対象によるSECの分類  
 
名称 測定対象 充てん剤 移動相
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC) 合成高分子の分子量分布を測定 疎水性 非水系(有機溶媒)
ゲルろ過クロマトグラフィー(GFC) 水溶性高分子の分離分取、分子量分布を測定 親水性 水系
 

図2にヒト血漿試料を精製して得られたタンパク質をSECで分離した例を示します。また、SECによる分析で得られたピークから、タンパク質分子量をおおまかに見積もるために、水溶性高分子化合物標準品(上:Thyroglobulin(669 kDa)、Aldolase(158 kDa)、Ovalbumin(44 kDa)、下:Ferritin(440 kDa)とConalbumin(75 kDa))を分析しました(図3)

図2 ヒト血漿試料精製後タンパク質の
クロマトグラム

図3 水溶性高分子化合物標準品の
クロマトグラム

図3の結果から、水溶性高分子化合物は分子量が高い順にカラムから溶出していることがわかります。
あらかじめ分子量がわかっている水溶性高分子化合物の標準品をマーカーとして使用し、図2で得られた分析結果と照合させることによって、精製して得られたタンパク質の分子量をおおまかに見積もることができます。

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