vol.77 島津製作所の液体クロマトグラフの思い出

talkのご執筆
相山律男教授

2010年7月発行
相山 律男 先生

株式会社ヤクルト本社
医薬開発部 主席研究員

(ご所属・役職は2010年7月発行時)

入社後,私が初めて手にした分析用LC本体はLC-3Aで,データ処理装置はクロマトパックC-R1Bでした。あの独特な音が,懐かしく思います。その後,データ処理装置クロマトパックC-R3Aを購入したところ,その機能に驚きました。C-R3A本体には,測定したクロマトグラムが記憶でき,いつでもパラメータを変えて再解析できるのです。ただし,スイッチを切ってしまうと,クロマトグラムは消えてしまうことが欠点でした。

そこで,5インチの外付けフロッピードライブを購入し,クロマトグラムを外部保存することにしました。その時,C-R3Aはコンピュータの言語のひとつであるJIS-BASICを受け付けるということを知りました。ならばと,当時はまだグリーンだったモノクロCRTディスプレイとキーボードを接続し,LC-3A/C-R3Aのシステム化を試みました。システム化の条件として,①リアルタイムでクロマトグラムをCRTに表示すること,②分析条件および試料名称を付してクロマトグラムをフロッピー(FD)に保存すること,を目指しました。

C-R3AのBASIC領域は思ったより少ないので,クロマトグラムの外部保存により不要となった記憶領域をBASIC領域に書き換えました。それでも,まだ領域が足りないので,プログラムは全てFD上に置き,必要なサブルーチンのみを読み込んで走らせました。

リアルタイムでCRT画面上にクロマトグラムを書かせるには,まず注入前に分析時間に応じた窓枠罫線を書かせ,注入後のレスポンスに応じたドットを窓枠内に表示します。ただ,ドットだけですと,遠くから見てわかりにくいので,ベースラインから引いた棒グラフを連続的に書かせることで,ピークを塗りつぶしました。

同僚の研究員が,一本のピークが出終わった時点でピーク計算を行い,画面に表示してくれとリクエストしてきました。分析終了を待たずに,面積百分率を知るためです。C-R3AはSTATUSという命令を出すと,エラーメッセージが返され,このエラーメッセージがピークの状態を示すことがわかりました。ピークのレスポンスを読み取るときに,同時にピークの状態を調査することで,本来なら分析終了後にしかできなかった定量計算が,分析の途中で可能になりました。

C-R3Aでは,クロマトグラムとして波形のみが保存されます。しかし,分析の条件と波形を同時に保存しないと意味がありません。そこで,プログラムによる分析の手順に工夫をしました。まず,プログラムを起動した際,分析条件画面(試料名称,移動相,カラム,日付,分析者,クロマトグラムのファイル名称など)を表示しました。よく使う移動相成分やカラムは,予め表形式で登録しておき,番号入力で簡単に分析条件を変更可能にしました。この画面で,試料注入しますと,自動的に画面が切り替わり,クロマトグラムの画面表示になります。分析終了後は,通常の定量計算および分析条件とクロマトグラムがセットでフロッピーに保存されます。波形処理のパラメータを変えて再解析する場合は,一連のファイル名称を呼び出すだけで,いつでも再解析できます。

今から考えると,とても簡単なプログラムでしたが,プログラムが完成したのは1984年で,その数年後に島津製作所より,リアルタイムでクロマトグラムを画面表示するCRT付きのクロマトパックC-R4Aが販売されたことを考えると,当時の最先端だったのではなかったかと思います。写真でも残しておけば良かったのですが。

分析機器をとことんまで使うということは,機器製造元も喜ぶでしょうけど,何より本人にとっての醍醐味といえます。若手の研究者の方,いろいろ工夫したり,チャレンジをしてみてください。醍醐味を味わえるのみならず,将来,きっと良い思い出になると思います。

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