vol.68 「HPLC: 高性能液相分離」

talkのご執筆
大塚 浩二 先生

2008年4月発行
大塚 浩二先生

京都大学大学院工学研究科 材料化学専攻 教授

(ご所属・役職は2008年4月発行時)

私とHPLCとの最初の出会いは大学院修士課程に入学した時(1981年)ですから,もうかれこれ四半世紀あまり前のことになります。 当時,京都大学工学部工業化学科工業分析化学講座(安藤貞一教授 担任)の助手を務められていた寺部茂先生(兵庫県立大学名誉教授)のご指導のもと,HPLC用新規検出器の開発研究を修士論文のテーマとして与えていただき,連日HPLCを操作していたことを思い出しますが,残念ながら当時は島津製のHPLC装置ではありませんでした。 ちょうど私の 1年先輩に,本誌第66号(2007年10月)のtalk欄にも寄稿されている西博行博士(当時田辺三菱製薬分析研究部長,現安田女子大学薬学部教授)がおられ,HPLCの原理や装置等について懇切に教えていただいたことが懐かしく思い出されます。

幸か不幸か,私の研究テーマは博士後期課程進学(1983年)と同時にHPLCから離れ,当時はまだほとんど知られていなかったキャピラリー電気泳動に変わってしまい,それ以後今日に至るまでHPLCを研究の主目的で使用してきたことはありません。 したがって,現在の最新のHPLC技術や研究の動向については,概略は把握しているつもりですが,その 詳細についてはもはや門外漢と言われても仕方のない立場になっています。

さてHPLCという語は言うまでもなく high performance liquid chromatography の省略形であり,その日本語訳は一般に高速液体クロマトグラフィーとして定着しています。 ステンレス鋼製耐圧カラムの開発と機械ポンプの利用による移動相の高速送液の実現が,従来の単純なカラムクロマトグラフィーの分離時間を大幅に短縮し,分離性能を飛躍的に向 上させる結果となったことは紛れもない事実です。 このような観点からは,high performance をよりその本来の意味に近い「高性能」と解釈する方が望ま しいかもしれません。

ところで,通称 HPLCシンポジウムと言われる国際シンポジウムがあります。 2008年5月に米国メリーランド州ボルチモアで第32回を迎える同シンポジウムは,1973年にスイスのインターラーケンにおいて第1回が開催されて以来1981年までは隔年に,1981年以降は毎年ヨーロッパと米国において交互に開催されています。 当初は International Symposium on Column Liquid Chromatography と称され HPLCの隆盛と共に発展してきたシンポジウムでしたが,1996 年の第20回(サンフランシスコ)以降 International Symposium on High Performance Liquid Phase Separations and Related Techniques(高性能液相分離及び関連技術国際シンポジウム)と改称して,キャピラリー/マイクロチップ電気泳動をはじめ液相において行われるあらゆる分離分析法を網羅して取り扱うシンポジウムという位置付けに改め,より一層の活況を呈しています。

通常は年一回の開催ですが,本年は5月のボルチモアに加え,12 月に京都において第33回が開催されます。そのため,前者を HPLC2008 Baltimore,後者を HPLC2008 Kyotoと称して区別していますが,これまで回数を冠した通常シンポジウムが欧米諸国以外で開催された例はなく(*),HPLC2008 Kyotoはその意味からも極めて重要な役割を担っています。 HPLC2008 Kyoto は不肖私が田中信男先生(京都工芸繊維大学教授)と共に組織委員長を仰せつかっておりその責任の重さを痛感しているところですが,幸い京都は島津製作所のお膝元でもあり,運営に対して多大のご協力をいただけるものと期待しています。 本誌の読者ならびにHPLCをはじめとする分離分析機器のユーザー各位におかれてはぜひともHPLC2008 Kyotoにご参加いただき,HPLC(液相分離)の最新技術や動向についての情報を得ると共に,世界最高水準の研究者との交流を図っていただきたいと思っています(**)。 本シンポジウムが今後の我が国のHPLC(液相分離)研究の一層の発展に寄与することを期待して本稿の結びとさせていただきます。

*    サテライトとして,2001年9月に京都で開催された例(HPLC Kyoto)があります。
**  HPLC2008 Kyotoについての情報はシンポジウム公式サイトをご参照ください。

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